弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年8月 5日

カジノ幻想

社会

                (霧山昴)
著者  鳥畑 与一 、 出版  ベスト新書

 世界一のパチンコ普及率であり、ギャンブル依存症が蔓延している日本へ、今度はカジノ産業を誘致して日本経済を復興させようという人たちがいます。カジノ法案を推進する議員連盟の多くは、安保法制法案、つまり戦争法案を推進する人たちでもあります。
 要するに、金もうけが出来れば、自分さえよければ、他人がどんなに不幸になろうとも、社会不安がひどくなっても、そんなことは知ったことじゃないという我利我利妄者の連中です。悲しくなります。
 アメリカでは、カジノは典型的な「略奪的ギャンブル」と言われ、ビンゴや宝くじといったギャンブルに比べても、ギャンブル依存症に誘導する危険性は非常に高い。
 カジノは、大金を得る快感と失う喪失感を交互に味わわせることで、脳内に物理的依存症と同じ状態をつくり出す。
 イギリスでは、カジノは長く会員制が原則だったし、カジノに認められるテーブルの数やスロットマシンの数は、きびしく規制されていた。ところが、IR型カジノは高収益の確保を必須とするので、このような規制は考えられない。
 カジノは、客がほとんど負けて終わるように商品設計されたギャンブルを提供するビジネスである。地方都市にカジノが出来たら、その客はほとんど国内顧客で占められることになる。
 すでにアジア市場でカジノは飽和化がすすんでいる。したがって、中国北部のギャンブラーが韓国・台湾を飛び越して大挙押し寄せるというのは、ほとんど期待できない。
 結局、日本にカジノが出来たら、そのほとんどは国内客だのみにならざるをえない。
 カジノ・ギャンブルは、客が負けるほど収益が増大するビジネスである。それは、地域の経済を衰退させ、ほとんどの客を負けに追い込むことで顧客を貧しくするビジネスなのだ。
 そのうえ、ギャンブル依存症という病を中心に、大きな社会的犠牲とコストを地域社会に押しつけるものである。
 現代のスロットマシンは、コンピュータプログラムで、長くプレイするほどカジノ側がもうけ、顧客側は必ず負けるように設計されている。いま、アメリカのギャンブル収益の80%以上はスロットマシンからである。
カジノにおける「もうける力」とは、より多くの顧客を負けさせる力のことである。
 カジノの「もうける力」の追求とカジノの厳格な規制は相反する。
 日本をこれ以上ギャンブル依存症患者の多い国にしてはいけません。日本にカジノはいりません。
(2015年4月刊。840円+税)

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