弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年7月27日

現実を生きるサル、空想を語るヒト

人間

                              (霧山昴)
著者  トーマス・ズデンドルフ 、 出版  白揚社

 霊長類にとって、他者をじっと見るのは脅しのジェスチャーであることが多い。霊長類は、たいてい視線を合わせることを避ける。
チンパンジーの目には白目がない。人間の目は視線の方向を伝える。自分がどこを眺めるのかはっきりと表に出し、他者がどこを見ているのかを読む。霊長類は、視線の方向をカムフラージュしている。
 模倣は、正常な社会的発達と認知発達にとって欠かせない。
 人間は、しばしば知らないうちに、互いをまねる。相手の姿勢や動き、話し方を無意識のうちにまねる傾向がある。教育は模倣を裏返しにしたもの。
チンパンジーは、団結もし、争いがあれば、相互に助けあう。このような連帯が、チンパンジーの政治的闘争の基盤となっている。
人間と同じように、チンパンジーは、自分を助けてくれた者のほうをよく助ける。チンパンジーは、誰と協力するのが一番いいのかを知っている。
 チンパンジーは、表情で他者に合図したり、他者から何かをせびったり、服従や優越性を示したり、仲直りを求めたりする。
 心のなかでシナリオを構築する能力は、人間では2歳から急激に発達する。
 人間の子どもは、起きているあいだのかなりの時間を費やして空想して遊ぶ。子どもたちは、人形などをつかいながら、シナリオを思い描いて飽きもせずに、それをくり返す。
 思考とは、根本的に、行動や知覚を想像することである。
 子どもは、遊びのなかで仮説を試し、数々の可能性を検討し、因果推論をする。
 子どもは心のなかでシミュレーションすることを学ぶ。要するに、考えることを学ぶのである。
 他者を楽しませるヒトは、性選択で有利な傾向がある。芸術家や俳優・音楽家には、人を楽しませるのではないタイプの人に比べてパートナーが多くいることが多い。
 人間とは何者なのかを、サルやチンパンジーなどと対比させながら考えていった本です。
(2015年1月刊。2700円+税)

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