弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年7月15日

老人たちの裏社会

社会

                              (霧山昴)
著者  新郷 由起 、 出版  宝島社

 ここで老人とされているのは、まさしく団塊世代である私の世代以上のことです。とても複雑な気持ちに陥りながら、我慢して最後まで読み通しました。ため息ばかりの本です。
 万引き犯の3人に1人が65歳以上。未成年者1万6千人より高齢者2万8千人のほうが断然多い。かつて、青年犯罪の代表格だった万引きは、今や8割が成人の犯行となった。
 今や、万引きする年寄りをアルバイト店員の学生がたしなめる時代なのである。再三味わった刺激と染みついた衝動が、絶え間なく襲ってくる。
 男性は生活困窮者が多く、盗品はもっぱら総菜や酒類。女性には常習犯が大変多い。万引きは、非常に成功率の高いギャンブルなのである。クレプトマニア(窃盗癖)がいる。
 特殊詐欺の被害にあうのは実は、高齢の男性が多い。しかし、被害を届出しない。それが明るみに出たほうが、よほど屈辱で、バツが悪いから。
 ストーカーの加害者には60代以上が目立って多い。ストーカー加害者の9割は男性。性的に衰えるのを極端に恐れて焦る男性が増えている。「次はないかもしれない」という焦りから、目の前の異性にしがみつく習性による。
 激高すると手がつけられない高齢者は非常に多い。難癖をつけたり、力にまかせて面倒をおこすことでしか人にかまわれず、おのれのフラストレーションを晴らせない。恥やはしたなさという咎めを自ら打ち捨ててしまえば、恐れるものは何もない。ヤンキーのような老人が巷(ちまた)にあふれている。
 DVの加害者は、家庭でわがままに育てられた人が多い。
 一人暮らしより、家族と同居しているのに身内から疎外されている老人のほうが、ずっと孤独なのである。独居よりも、同居しているほうが、ずっと孤独である。独居よりも、同居世代のほうが自殺率は高い。
人間は一日に最低1回は必要なドーパミンが脳内で分泌されないと生きていく意欲が生まれず、むしろ生きることを苦痛に感じる生き物である。
 毎日、その人なりの悦びを見出し、満たされないと、生き続ける活力の減退につながる。
 毎日、やることがある幸せ、そして心はずませて生きる充実感を大切にしよう。
 いつのまにか66歳になってしまった団塊世代の私です。毎朝、毎晩、今日はこれをした、明日はこれをしようと思って生きています。やるべき仕事があるって、ホント、とても幸せです。
(2015年7月刊。1300円+税)

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