弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年6月30日

キューバ危機

アメリカ

                               (霧山昴)
著者  ドン・マントン、デイヴィッド・ウェルチ 、 出版  中央公論新社

 私はアメリカのケネディ大統領もソ連のフルシチョフ首相も、故人としてはそれほど傑出した人物とは考えていませんが、それなりの常識はもっていた人だと考えています。
 この二人のおかげで、地球は破局を迎えることがなかったのです。それが、安倍首相のような、ウソを平気でついて、反省することもないという非常識きわまりない人物が、どちらかのトップにいたら、今の地球はなかったでしょう。
 安倍首相の支持率が今なお50%を割っていないことに、私は心の底から不安を感じています。日本人の知性のレベルって、それほどまでに低下したのでしょうか・・・。
 安全保障法制が成立しても自衛隊員のリスクは増えないと断言する安倍首相のウソを許してはいけません。日本人は、もっと怒るべきです。あなたまかせではいけないのです。
 1962年のキューバ危機をふり返るのは、安倍のようなとんでもない人物を首相とする日本にとって、大いなる教訓です。
1962年10月のキューバ危機は、人類史上もっとも危険な出来事だった。
 ケネディとフルシチョフは、ともに事態が制御不能となる危険をしっかり認識するようになった。二人は、事故や誤解、意図せぬ行動によってのぞまざる聞きがエスカレートしはじめることを心配した。
 米ソの冷戦期は、アメリカのほうがソ連に比べて圧倒的に裕福だった。
 しかし、陸軍力ではソ連がアメリカを優っていて、本格的な熱戦がおきたら、ソ連はヨーロッパのNATO戦力を短期間で圧倒できると考えていた。だから、NATOは、ソ連を牽制すべく、核による報復の脅しに頼った。
 多くのキューバ人は、アメリカが1898年にご都合主義的に介入したと感じている。その怒りは、今日までに尾を引いている。キューバ人は、スペインからの独立を求めて命を賭けて戦った。アメリカは、その栄光を手中から奪い去り、今度はアメリカ流の植民地支配を押しつけてきた、と学校で習っている。
 ちなみに、アメリカ軍は、キューバを1902年まで占領し続けた。
 アメリカ大使は、政界の実力者であり、キューバ大統領より強大な権力を行使していた。
 このころ、ソ連もキューバの情報機関も、ともにアメリカが侵略してきそうだとは考えていなかった。
 CIAは、キューバにある8基ものミサイルが8時間以内に発射可能となる予測をした。CIAは、キューバにソ連軍は5000人、せいぜい1万人と考えていた。本当は、4万2千人ものソ連兵がいて、戦術核兵器で武装していた。
 ケネディは、キューバをいじめ、脅かしたことで、恐れていた挑戦を誘発した。フルシチョフのほうも荒々しく大言壮語をくり返し、ベルリン問題でたえまなく脅しをかけ、ケネディに嫌がらせをして大人しくさせようとしていた。ソ連の軍部は、劣勢ではあれ、十分な戦略核能力があるため、アメリカの攻撃は抑止されるはずで、譲歩は不要だと確信していた。ケネディもフルシチョフも、自国軍の司令官たちの自信におおむね懐疑的で、彼らの進言に毅然と抵抗したのは幸運だった。
 政府や軍は複雑なシステムで、そこでは間違いも起こる。大規模な軍隊が戦闘準備を整え、命令一下で行動に移ろうと身構えているとき、間違いが起これば、あっという間に破局的な結果をもたらしかねない。
 核兵器の保有国が増えてしまった核時代の今日、共感の欠如は大きな懸念材料となる。
 左右のバランス感覚がなく、ないことを高言して恥じない人物を首相とする日本は、いま不幸の極みにあります・・・。
(2014年9月刊。2300円+税)

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