弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年5月23日

やきとりと日本人

社会

                               (霧山昴)
著者  土田 美登世 、 出版  光文社新書

 たまには美味しい焼き鳥を食べたいですよね。そして、この本を読むと、焼き鳥の世界も奥深いものがあることを思い知らされます。
 東京・銀座にある有名な焼き鳥店で食べたことがあります。さすがに、いつも食べているような焼き鳥とは格別の違いがありました。なんといっても素材が違います。
 キジは、日本のジビエ史におけるグルメ素材の一つ。奈良時代、平安時代、鎌倉時代、室町時代と、上流階級におけるとり料理の主役はキジだった。鶏も七面鳥も、キジの仲間である。
 江戸時代には、それ以前から人気のあったキジに加えて、カモもよく食べられるようになった。ただ、格があるとりと言えばツルで、将軍や大名の膳に用いられていた。
 フランスのブレス産の鶏は、自由放飼、飼料などに細かい規制がある。出荷されるのは空腹にして1500グラム以上のもので、日齢でいうと120日以上のもの。
1980年代のパリで、すでに本格的な日本の焼き鳥はウケていた。
 今は、店で鶏をさばくには食鳥処理の免許が必要で、それをもつ店はごくまれ。ほとんどの店は、さばかれた肉と内臓部分を別々に買って、それを店のサイズに切り、串にさしている。
 日本の「七大やきとり」は、北海道の美唄、室蘭、東北の福島、埼玉の東松山、愛媛の今治、山口の長門、そして福岡の久留米。
 鶏肉は朝絞めがいい。鶏肉に鮮度は大切だ。
 熟成に必要とされる期間が、牛や豚のそれよりもはるかに短く、参加されやすい不飽和脂肪酸を多く含んでいる。つまり、脂肪が酸化する前に食べてしまわなければならないのだ。ブロイラーは、日齢40~50日ほどで出荷される。地鶏の日齢は最長で150日。両者には100日間も差がある。
 1本を1分間で食べ終わる世界だが、たいていの名店では、6時間以上かけて何百本と仕込みをし、いつも同じ焼き手が、炭火に集中しながらチャンチャン焼いていく。
 この世界は、串打ち3年、焼き一生といわれる。二つの技術、とりを炭のうえに安定して置いて均一に焼けるように串を刺す技術と、それを焼きあげる技術が必要とされる。
 やきとりの魅力のひとつは、甘いたれが焦げたときの香ばしい香りである。
 たかがやきとり、されどやきとり、ですね。さあ、美味しいやきとりを食べに行きましょう・・・。
(2014年12月刊。780円+税)

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