弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年5月 3日

冬を待つ城

日本史(戦国)

                                (霧山昴)
著者  安部 龍太郎 、 出版  新潮社

 戦国時代の東北、陸奥(みちのく)九戸城に立てこもって豊臣秀吉勢15万を相手に見事にたたかった九戸(くのへ)政実(まさざね)が主役の小説です。なかなかに読ませます。
 秀吉は朝鮮出兵のためには、寒さに強い東北の人々を朝鮮で働かせるつもりだった。人狩りだ。ところが、それを察知した九戸政実たちは、あの手この手を使い、盛んに謀略を用いてまで、ついに自分の生命と引き換えに人狩りを実現させなかった。
 東北のたたかいが秀吉の朝鮮出兵と結びついたなんて、知りませんでした。本当に史実を反映した話なのでしょうか。それとも小説という創作なのでしょうか、誰か教えてください。
 かつては南部家と九戸家、久慈家は対等な親戚につきあいをしていた。それが秀吉の指示により南部信直の配下に九戸も久慈も立たされることになった。
 東北の雄である伊達政宗、蒲生(かもう)氏郷(うじさと)も登場します。話は謀略に次ぐ謀略として展開していきますので、面白いことこのうえありません。地形をふくめて、よく調べて書かれているので、本当に読ませます。
 3000の城兵で15万の包囲軍と戦う。しかも、玉砕ではなく、勝てるという、なんと、それも3日間で・・・。
 本当ですか、信じられません。そして、それが現実のものになっていくのです。
 二戸市、久慈市のそれぞれ市史が参考文献に上がっていますので。よく調べたことが分かります。
 クライマックスは九戸城を大軍の秀吉勢が包囲する戦いです。これにも『骨が語る奥州戦国九戸藩城』という本が参考文献としてあがっています。
 史実を基本として、あまり曲げることなく読みものに仕立てあげる。私も、ぜひ挑戦してみたいと思っています。450頁もの大作です。2日かけて、じっくり読み通しました。
(2014年10月刊。2000円+税)

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