弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2015年4月 9日
ユニクロ対ZARA
社会
著者 斉藤 孝浩 、 出版 日本経済新聞出版社
ユニクロもZARAも有名な衣料品メーカーです。といっても、私自身は、どちらの店も入ったことはありません。とりわけ、ユニクロは世にも名高いブラック企業ですので、買うつもりはありません。若者を使い捨てにして、企業だけもうかるなんていう仕組みは間違っています。
まあ、それはともかくとして、世界的な衣料品店の販売戦略の違いがどこにあるのか、それを知りたくて読んでみたのです。
ユニクロが短期間に多店舗展開できたのは、店舗の標準化をすすめて、ローコストで出店できるようにしたこと、作業の徹底的なマニュアル化により、とくに洋服が好きな人でなくても、接客力の身についていない新人でも、誰でもできる店舗運営にしたから。
ユニクロは、購買客層が広がるユニセックス、ノンエイジ向けのベーシックに力を入れた。学生でも主婦でも、誰でも気軽に買える1000円や1900円の低価格にしぼったことから、客数が大幅に増えた。この二つの要素が掛け算となって集客力を高め、キャッシュフローが生まれ、店舗投資の回収スピードも加速した。
ユニクロは客数の多さが生み出してくれる商品回転の高さとキャッシュフロー、また販売数の増加によって信頼できる統計データとなった売れ筋情報をつかんだ。
ユニクロは、商品企画は1年がかり、しかし、週単位できめ細かく製造販売調節と原価管理を行う。つまり、製造と販売については、毎週、意思決定し、調節している。
1990年代にユニクロが一気に多店舗化を果たせたのは、店舗の業務マニュアル化のおかげだった。しかし、その反面、過度のマニュアル化によって、指示待ちの店長や良識・常識に欠けるスタッフが増えた。そのことに限界と危機感を覚えたユニクロは、個別店舗の成長に向けて、運営方針を180度変えた。それは、自店にどうして集客して、どんな商品を売り込むかを自ら考える「商売人としての店長」の育成だった。その店を生かすも殺すも、主(あるじ)である店長にすべてがかかっているのだ。
ZARAは、トレンドファッションに興味はありながら、高価なため百貨店では気軽に変えないという女性の、ドレスアップに対する欲求を満たすことを目ざしている。
ZARAの中心顧客は、世のなかでもっともファッションに気をつかい、お金もかける客層であるワーキング・ウーマン(働く女性)である。
ユニクロのコンセプトは、年齢を問わず、誰もが着用できるカジュアルウェアやインナーウェアであるので、求められるのは体にフィットしすぎず、窮屈でない着心地、機能性、申し分のない品質と洗濯耐久性。そのため、ユニクロの服は、多くの人が着用できるように、サイズは大きめにつくられている。
ZARAは、着る人を美しく見せるために、体に合わせ、ほどよくフィットする。
ユニクロもZARAも、1店舗あたりの売り場面積が大きく、店内では顧客が気に入った商品を自由に手にとり、試着して購入できる「セルフ販売」方式を採用している。
ユニクロは、ジーンズの標準販売期間を12週間に設定している。その期間中に、ベーシック商品を欠品させないため、安定供給のための選択と集中を実施する。
ユニクロは、厳選した工場で専用の縫製ラインを確保し、同じ商品を数十万枚規模で計画大量生産することで商品品質の向上と供給の安定を目ざしている。
売上げにバラつきの出るカラーやサイズについては、できるだけ直前に意思決定を行い、リスクを回避している。
ZARAも、ユニクロと同じく、春夏秋冬それぞれ1シーズンの販売期間を12週に設置している。そして、最初の時点では、用意される商品はシーズン販売予定の4分の1、3週間分の販売量だけ。
トレンドファッションを扱っているZARAでは、売れ筋商品を欠品させないように補充する考え方はない。ZARAは、出店国の百貨店価格のおよそ半額あたりを狙っている。なぜか?
消費者の購買心理である。50%オフ(半額)となると、興味のある商品なら、いま買わないと後悔すると迷わず購入してしまう。絶対的な安さを感じさせる値段だから・・・。
ユニクロは、年間52週、毎週金曜日に、金曜から月曜日までの4日間限定特別価格のチラシを新聞に折り込んでいる。ユニクロのプロモーションの根幹をなしているのは、今でも新聞の折り込みチラシだ。毎週のチラシに掲載する商品ラインナップと、その価格を決定することが、週間業務のなかでもっとも重要なことのひとつになっている。毎週金曜日に欠かさずチラシが届き、週末にユニクロに行けば、季節にあったお買い得商品が必ずある。この約束を果たす。チラシは、お客様へのラブレターだ。チラシの本質は号外。チラシで商品や店舗のイメージアップは無理。毎週のチラシで読み手を飽きさせないようにするのがコツ。
ZARAは、広告宣伝をほとんどしない。ZARAは店舗こそ、最大の広告宣伝と考えている。買い物体験が口コミで広がることを期待している。
ZARAが集客のためにこだわっているのは、週に2回、月曜日と金曜日に欠かすことなく新製品を投入し、同時に店舗の商品配置を替えること。
ユニクロは、都心部の駅ビルに進出するとき、家賃の高い下層階ではなく、大きな売り場面積のある上層部のフロアーを狙う。そして、1店舗あたりの売上げをあげるため、大型化、売り場面積の拡大をすすめた。
ユニクロの製品が中国で生産され、日本へ届くまで、ほとんどの商品の段ボール箱が一切開かれない。
ZARAでは、世界各地でつくられた商品は、いったんスペインに集め、そこから店舗ごとにまとめて世界87ヶ国へ配送される。すごいですね、信じられません。
ユニクロとZARAの商品の共通点と相違点とが、具体的に語られていて、本当によく分かる本でした。
(2014年12月刊。1500円+税)