弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年2月10日

アベノミクスと日本資本主義

社会


著者  友寄 英隆 、 出版  新日本出版社

 めったにテレビを見ないのですが、たまたまホテルに泊まったとき、NHKがトリクルダウンを図解しているのを見ました。大企業と金持ちを優遇したら、そのうち下々の庶民もおこぼれにあずかれるだろうという絵があり、そのように解説されていました。
 だけど、これは、まるで宝くじにあたるようなものです。たしかに、たまにはあたる人もいるわけですが、大半の人は、「そのうちあたるだろう」という期待を抱かされるだけで、いつまでたっても恩恵を受けることは出来ません。アベノミクスのトリクルダウンって、庶民だましのものでしかありません。この本は、その点を分かりやすく解説しています。
 安倍政権の経済政策は、マスメディアがアベノミクスなどともてはやすほどの、独自の新しい経済理論に裏付けられたものではない。
 アベノミクスの「新しさ」は日銀の国債買い入れなどによる「異次元の金融緩和」政策である。しかし、これは、一種のモルヒネのような、「禁じ手」すれすれの政策であり、長期的にみれば、日本経済を取り返しのつかない危険にさらすことになる。
日本の株価に上昇傾向が続いてきたことは、輸出大企業や金融・証券関連の企業、そして金融資産をもつ富裕層には、法外な利益をもたらした。
 たしかに、飛行機に乗ると、福岡から東京へ行くだけでもファーストクラスを利用する人々で満席になってしまいますので、日本の一部に好景気の恩恵を受けている人がいることを実感させています。それも、案外、20代とか30代という若い人たちが利用しているのですから、たまりません。
 トリクルダウンというのは、経済理論というより、一種の政治思想だ。経済学者で「トリクルダウン理論」なるものを発表した学術論文はない。
 日本経済の現実において、トリクルダウン的な経済の「好循環」は働いていない。いま、「メイド・イン・ジャパン」ではなく、「メイド・バイ・ジャパン」なっている。「メイド・イン・ジャパン」とは、日本国内で日本企業が生産して製品を輸出すること。「メイド・バイ・ジャパン」は、海外への投資を促進しながら、グローバル企業の活動を支援しようとしている。
 トヨタ自動車の総売上高は、1996年には、日本農業の総産出額と同じだった。しかし、その後の20年で大幅に格差が広がり、最近では、トヨタ一社の売上高は、日本全体の農業総産出額の2.5倍にもなっている。
 全世界で、富と貧困の格差が拡大しており、1%の富裕層が世界の富の半分を独占している。
消費税の税率が8%になってから、深刻な不況は一段とすさまじいものになっています。総選挙が終わって、ますます物価は上がり、福祉は削減される一方です。消費税が8%にアップし、さらに10%へアップするというのですから、たまりません。アベノミクスなんていう言葉に、私は絶対にごまかされたくありません。安倍首相の一刻も早い退陣をひたすら待ち望んでいます。これも、世のため、人のためですよね・・・。
(2014年6月刊。1600円+税)
 日曜日は急に寒の戻りがありましたが、庭の紅梅が咲いています。白梅のほうは、まだつぼみでしかありません。
 昨年はたくさんの梅の実がなくなりましたが、それは白梅のほうでした。今年は紅梅も実をつけてくれるのでしょうか・・・。
 冷たい風の吹くなかで球根の植え替えをしていると、いつものようにジョウビタキが近寄ってきます。遊びましょ、と声をかけてくるという感じです。図鑑によると、オスのようです。黒っぽい頭とノド、そして茶色のぷっくりしたお腹、羽に白い斑点があります。本当に愛嬌たっぷり、可愛らしい小鳥です。手のひらにのせて頭をなでてやりたくなります。
 チューリップのつぼみがどんどん頭を出しています。春は、もうすぐです。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー