弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年2月 3日

ワタミの初任給はなぜ日銀より高い?

社会


著者  渡辺 輝人 、 出版  旬報社

 えっ、天下の日銀、銀行の銀行である日本銀行より、かの有名なブラック企業であるワタミのほうが初任給が高いだなんて、そんなのウソ、ウソでしょ・・・。
 ところが、HPによるとワタミの大卒初任給は24万円超なんです。それに対して、日銀の大卒、初任給は20万円超でしかありません・・・。トホホ・・・、です。これは、おかしい。何かのカラクリがあるに違いない。本書は、そのインチキなカラクリを解説していきます。
ワタミの月収には、月平均所定労働時間数に対応する賃金に加えて、残業や深夜早朝の労働を前提にして、労働基準法で定められた時間外割増賃金、深夜早朝割増賃金があらかじめ織り込まれている。つまり、ワタミの賃金は、いわば水増しされている。
 賃金水増しの求人広告が禁止されていない。これは問題だ。
 割増賃金の未払いは犯罪である。労働基準法違反は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる。そして、同額の付加金が課される。
 サービス残業は、経営責任を負っているものの甘えであり、経営リスクそのものである。サービス残業を放置しておくと、企業の投資家や債権者に対する背信行為ともなる。
 ワタミでは、1日8時間労働のうえに2時間の法定時間外労働が課され、労働時間全体のうち6時間程度は、深夜早朝の時間帯であり、休日は完全週休2日が必ずしも保障されない。このような職場では、いかに20代の若者でも、なかなかハードなのではないか。
 残業代は固定残業代として支払い済みになるため、ワタミでは月収24万円以外には、一円の残業代も支払われない。
 「年俸400万円」というように、年額を大まかな数字で提示する事業所も要注意。これも固定残業代などが「込み込み」になっている可能性がある。
 また、やたらと「楽しさ」「やりがい」などの精神論を強調する企業も注意すべき。
固定残業代が支払われていても、それに対応する時間をこえる時間外労働がある場合には、会社は残業代の計算をして、別に支給しなければならない。だから、本来、会社にとって固定残業代のメリットはあまりない。それでも、見かけの賃金を高くすることによって、労働者を誘引するなどの効果はある。
 残業命令は明示である必要はなく、黙示の指示があればよい。
 記録がないなら、自分で記録すればよい。そうなんです。自分が書いたメモでも、十分にたたかえるのです。はじめから、手元に証拠がないといって、簡単に残業代の請求をあきらめてはいけません。
 ただし、残業代は2年で消滅時効にかかってしまう。
京都の若手弁護士による、とても実践的な残業代の請求の手引書です。サービス残業地獄からの突破法というサブタイトルがぴったりくる本でした。ぜひとも、みなさん大いに活用してください。
(2015年1月刊。1500円+税)
 日曜日の朝は風もなく、を思わせる温かい陽差しでした。春の近さを実感しました。
 午後から庭に出て球根の植え替えをしました。いつものようにジョウビタキがやってきて、近くで畑仕事を眺めています。
 いま、黄水仙が咲きはじめ、クロッカスの黄色い小さな花も咲いています。チューリップの芽もどんどん出ています。
 日が長くなり、気がついたら、もう夕方の6時でした。空に月が輝いています。
 さあ、風呂に入りましょう。身体を温めて、疲れをとります。蚊も虫もいない今は、畑仕事が一番やりやすい季節です。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー