弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年2月16日

イチョウ、奇跡の2億年史

生き物


著者  ピータークレイン 、 出版  河出書房新社

 日本中どこにでも見かけるイチョウですが、実は絶滅寸前にまでなった樹木だといいます。2億年も生きていたのに絶滅寸前になったとは・・・。そして、中国に細々と生き残っていたイチョウが日本に渡来してきて、そこからヨーロッパに行き、現在のように世界中に再び拡散して根付いているというのです。不思議な長命の木なのですね。・・・。
 種子植物のうち、花粉管のなかで精子を形成するのはイチョウとソテツしかない。イチョウは古い生殖様式をそのまま残した驚異の植物である。
イチョウは、かつて北半球の全域で見られたが、気候変動のために中国南部の山間地を除いて絶滅してしまった。そして、800年前ころに韓国や日本に広まった。寺院の庭などに植えられた。そして、17世紀後半に、日本でヨーロッパ人が見出すと、わずか数十年でヨーロッパ中にひろまり、やがて全世界に迫出していった。イチョウは大気汚染にも害虫にも病気にも強い木だからである。
 イチョウは、植物としてはかなりの変わり者で、現生する近緑種が存在しない。
イチョウの葉は、他の木の葉と比べると頑丈で、そう簡単には腐食しない。
 イチョウの巨木に何枚の葉があるか、それを数えたアメリカ人がいる。それによると、10万枚近かった。巨木には30万枚から50万枚。もっと古い巨木だと100万枚になるかもしれない。
イチョウは、雄の個体と雌の個体とが別々に存在している。一本のイチョウの雄木からでる花粉粒の量は驚くほど多い。1本の木が1年でつくり出す花粉の生産量は1兆個にもなる。その花粉粒が雄木で発生中の胚珠にたどり着く確率を考えると、それくらいは必要になるのだ。
 イチョウは、冬のかなりの低温や夏のかなりの高温をとりあえず短期間なら耐え抜くことができる。シカゴは冬にマイナス33度C、夏に42度Cにまでなるが、そこでもイチョウは平気で育つ。
 現在、イチョウは世界中で見ることができるが、それは基本的にヒトが植えたもの。
イチョウは、世界中に飢えられている街路樹の代表だ。イチョウには健康増進効果があるとされている。
イチョウの精子を発見したのは、平瀬作五郎という日本人であり、明治29年(1896年)のことだった。同年に、ソテツの精子も発見されている。
黄変した見事な街路樹は、たしかに日本全国にありますよね。昔みた東大本郷のイチョウ並木も壮観でした。イチョウのことがよく分かる本です。
(2014年9月刊。3500円+税)

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