弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年1月24日

憲法を守るのは誰か

司法


著者  青井未帆 、 出版  幻冬舎ルネッサンス新書

 今、大いに行動し、声をあげている気鋭の憲法学者による本です。
 憲法は道徳本とは違う。
 自らの人生をどう生きるかは、個人の選択に委ねられるべきこと。国家は、人の心に入り込んで、その選択に介入してはいけない。
 自民党の憲法改正草案は、憲法に定めるべきでないことを盛り込んでしまっている。
 明治憲法には、人々の自由や人権という概念や、その保障のための制度が大いに欠けていた。
 選挙で勝った「時の多数者」によって、簡単に人権規定などの思い意味をもつ憲法の規定がコロコロと変えられたら、選挙という民主的政治過程で負けてしまいがちな少数者の人権を危機にさらすことにほかならない。
 小選挙区制は、選挙区から一人しか当選しないので、振れ幅が大きくなってしまう。
 憲法9条の「キモ」は第2項にある、9条1項だけでは、武力行使の全面的な放棄にはならない。第2項があってはじめて、いかなる戦争をも放棄し、武力をもたないという我が国の憲法独自性が発揮されることになる。
 9条が規範力を及ぼした結果、他国とはひと味ちがう独自の安保政策が70年近くのあいだに積み重ねられてきた。
 日本は、関係機関と協力して、小型武器の回収・廃棄プロジェクトや、元兵士、元児童兵の武装解除・社会復帰事業などを実施してきた。
 軍縮・不拡散の取りくみへの日本による努力は、もっと広く知られてよい。
 平和的な外交の蓄積が、日本人が世界各国を観光やビジネスで訪問するとき、目には見えていないけれど、日本人の安全を保障する貴重な財産となってきた。これを改めて認識すべきだ。
いま、安倍首相が、それを根底から覆そうとしています。怖いです。
 まさしく、憲法を守るのは、私たち国民一人ひとりの声です。あきらめることなく、声を上げていきましょう。
(2013年7月刊。838円+税)

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