弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年1月15日

日中歴史和解への道

司法


著者  松岡 肇 、 出版  高文研

 著者は2006年まで福岡で弁護士をしていましたが、今は東京で活動しておられます。
 戦時中、中学2年生になったばかりで(13歳)、福岡の市内電車の運転手をしていました。学徒動員です。
 学徒動員って、大学生だけではなくて、中学生も対象だったのですね。そして、13歳の少年に市内電車を運転させていたなんて、ひどい話ですよね・・・。
日本は、敗戦間近となった1943年4月から45年5月までの2年間に、占領していた中国から中国人を強制的に日本へ連行してきて、土建業や金属鉱山、炭鉱や造船、港湾荷役などの重労働現場で強制労働、奴隷労働をさせていた。
 中国各地から4万人近い人々を連行してきた。年齢は、11歳から78歳まで。強制労働をさせた日本企業は35社、135事業場。北海道から九州にまで及んでいる。
強制連行・強制労働させたのは日本軍だったが、強制労働については日本の企業が加害者として関わっている。
 1995年6月から2005年9月までに日本で提訴された裁判は、12の地方裁判所で15件の裁判だった。原告数は275人、被告となった日本企業は24社。
 中国人を日本へ強制連行したのは、日本人(男性)が兵隊や軍属として召集され、国内男子労働者が急速に減少したことによる。
 何しろ古い話です。戦中のことなので、記憶が薄れてしまっています。事実の再現と確認すら困難です。
そのうえ「国家無答責の法理」というものがある。これは、戦前の明治憲法の下ですすめられた国家の権力作用については、それによって個人の損害が発生したとしても、民法の適用はなく、国の賠償責任を問うことも出来ないとするもの。
 しかし、そんな「形式論理」で原告の主張を排斥してよいものでしょうか・・・。最高裁の判決こそおかしい、無法だと思います。
 西松建設事件では、裁判こそ敗訴となったものの、西松建設側の内部事情もあって、それなりの内容で和解が成立し、現地に立派な石碑まで建立されています。東京の内田雅敏弁護士ほかの努力が実ったのです。
 村山・河野談話の見直しがいま話題になっています。日本政府は、過去、日本軍がしたひどい侵略戦争について正面から向きあって謝罪することをしていません。とりわけ今の安倍政権の開き直りはひどいものです。アメリカからも顰蹙を買っているほどです。
 松岡先生、今後ますます、お元気にご活躍ください。ありがとうございました。
(2014年12月刊。1500円+税)

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