弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2015年1月13日

世界一うつくしい昆虫図鑑

生き物


著者  クリストファー・マーレー 、 出版  宝島社

 見事に極彩色の昆虫図鑑です。よくもまあ、これだけ姿も形も色も大きさも、さまざまに異なる昆虫が、この地球上に存在しているものです。この昆虫図鑑をめくりながら、世の中のことを私は実によく知らないことを改めて実感しました。還暦をとっくにすぎて、弁護士生活も40年以上となり、この社会のことは多少なりとも知っているつもりなのですが、実は、まだまだ知らないことのほうが圧倒的に多いことを知らされてしまうのです。
 頁をめくっていると、目がまわってしまうほど、多種多様な昆虫たちが登場します。
 「歩く宝石」と言われるオサムシには、どれ一つとして同じ色と模様の個体がいない。ですから、みんな並べると、統一性はあっても画一性はないのです。それでも、タマムシは1500種、コメツキムシは1万種といいます。それを丁寧に分類している学者がいるのです。学者ってすごい根気が求められる商売ですね。
 奈良の玉虫の厨子のタマムシは死んでも色が変わらない。しかし、キンカメムシは、生きているときには非常に色鮮やかな翅を持っているが、死んだら体色は褪(あ)せてしまう。
 「森の宝石」と呼ばれるプラチナコガネは、周囲の風景まで写し込むほどの金属光沢がある。
 ゾウムシは、世界中に6万種いる。頑丈な外骨格におおわれ、ゾウの鼻のような長い口吻(こうふん)をもっている。
 中南米の熱帯雨林に住むチョウであるベニスカシジャノメは、透明な翅をもち、後翅に眼状紋がひとつずつあり、翅の先はぼかしたような赤色に染まっている。息を呑む美しさです。
 インドネシアのメダマチョウは、鳥に補食されるのを避けるため、翅にふくろうの目玉を擬態した眼状紋をもっている。その目玉は、2個だったり、4個だったり、6個だったりする。
 植物昆虫と呼ばれる昆虫もいます。植物に擬態する昆虫のことです。鳥から見つかりにくいように、たとえば枯れ葉に擬態した体をもったカマキリがいます。そして、この擬態は個体によって全部異なるのです。
 植物昆虫は、互いがあまり似通った姿にならないように努めている。植物昆虫は、植物になりすますだけでなく、植物には必ずある、枯れたり病気になったりした葉や、昆虫の食害の痕まで真似るという、とてつもなく有効な方法を選んでいる。
 健康な昆虫が、昆虫に食われた植物に擬態し、同時にその植物を食べているというのは皮肉な話だ。
昆虫採集家によって昆虫が絶滅することを心配する人がいるけれど、それは事実に反している。恐ろしいのは、生息地をまるごと、根こそぎ人間が破壊して「開発」してしまうことだ。
 230頁の大型図鑑です。値段も3800円と少々高いので、ぜひ図書館で手にとって眺めて楽しんでみてください。
(2014年4月刊。3800円+税)

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