弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年12月31日

データで読む平成期の家族問題

社会


著者  湯沢 雍彦 、 出版  朝日選書

 日本の家族に関する面白いデータが満載の本です。
平成22年(2010年)時点では、男の80%、女の90%は50歳までに一度は結婚している。
 児童虐待は小さなものまで含めると最近は急増し、年に6万件が報告されている。格差が拡大し、低所得家族での親子関係は悪化している。
 夫婦として暮らしている者(内縁を含む)は3200万組あり、年間の離婚件数23万件は微々たるものにすぎない。したがって、制度としての婚姻は健在であり、夫婦と親子の大部分は安定していると言える。
 出生の実数は、平成2年に122万人、平成12年に119万人、平成23年は105万人と減少を続けている。
 婚姻件数は、昭和47年に史上最高の110万件、婚姻率10.4%。その後、急速に下降し、昭和62年に69万件、婚姻率5.7%、平成25年には66万件、婚姻率5.2となっている。このように婚姻志向は明らかに低下している。
 結婚式の費用は、平成23年344万円。ご祝儀226万円を除いて、120万円の負担。招待客の平均は74人で、やや減少しつつある。
 この25年間で目立つのは、再婚の増加。再婚における女性のためらいは、非常に低くなってきた感じである。
 「妻の氏」を称する再婚が、妻再婚の場合に6.6%、夫再婚の場合に4.7%、そして再婚同士の場合には9.0%。この最大の理由は、子連れで再婚する妻とこのために、その姓を変えないようにしたいという思いやりが強まったことによる。
平成1年の離婚件数は15万8000件、平成14年には29万件となった。ところが、平成15年から減少していて、平成23年には23万6000件となった。日本は離婚が多い国とは言えない。先進国の中では、イタリアを除いて、最も低い。100組に1組の夫婦も離婚していない。
 日本では、養子縁組が年間8~10万件ある。日本は世界有数の養子大国である。ところが、特別養子縁組は、この10年間に年間400件未満しか成立していない。
 葬儀費用は平均231万円。高額なのは東北で283万円、低額なのは四国で150万円。
 樹木葬墓地は、供養代を含めて50万円ほど。
成年後見の申立は平成12年に7451件、平成23年は2万6000件で、4倍近くも増えた。禁治産の申立件数の10倍にもなる。認定されたものの累計は21万人。
 しかし、ドイツは、人口が日本の3分の2でしかないのに、年120万人が利用している。日本も120万人が利用して当然なのだが・・・。
これらのデータは、日本の家族問題を考えるうえで、また家族をめぐる事件に対処するとき、必須不可欠の基本的知識と言えます。
(2014年10月刊。1400円+税)

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