弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年12月 1日

わたしたちの体は寄生虫を欲している

人間


著者  ロブ・ダン 、 出版  飛鳥新社

 1850年のアメリカの平均的寿命は40歳。1900年に48歳となり、1930年に60歳に延びた。
 いま、北米には60万人のクローン病患者がいる。クローン病は遺伝的傾向があり、タバコを吸う人に発症しやすい。クローン病にかかった人の家には、必ず冷蔵庫がある。
 このクローン病の原因は、寄生虫が体内に存在しないことではないか・・・。免役システムが機能するには、寄生虫の存在が必要なのだ。寄生虫がいなければ、免疫システムは無重力状態に置かれた植物のようになる。
 寄生虫は万能薬ではなく、誰にでも効果があるわけではない。
 人間の腸には、1000種類以上の細菌が棲んでおり、人体の他の場所にはさらに1000種が生息している。それらのほとんどは、見つかった場所でしか生きられない。
 パスツールは、細菌と人間は相互に依存して進化してきたのであり、腸内の細菌を殺せば、人も殺すことになると述べた。
 シロアリは腸内の細菌が死ぬとまもなく死んでしまう。細菌がいないと、分解しにくい好む食べ物を消化できないからだ。
 おとなの犬は牛乳を消化することができない。乳牛、ブタ、サル、ネズミなど、哺乳類の成体すべてに言える。哺乳類にとって、乳はあくまで赤ちゃんの飲み物なのだ。
人間の祖先たちも牛乳を消化できなかった。しかし、今日、西洋人の大半は、おとなになっても牛乳を消化することができる。マサイ族は、牛の群れを追って移動しながら暮らし、大量の牛乳を飲む。
 サバンナザルは、「ヒョウ」「ワシ」「ヘビ」という三つの言葉をもっている。おそらく人間の祖先も同じだ。そして、その次は「走れ!」という動詞だった。
 チンパンジーは、一般に高さ3メートル以上のところに巣を作る。それは、ヒョウがジャンプできる高さより上だ。
地上で暮らすようになってから、ゴリラは大きく強くなった。それは、捕食動物に対する防御手段だろう。
 人間の出産は午前2時前後が多い。夜中に赤ちゃんを産むのは、その時間帯なら周囲に身内が集まって眠っていて、何かあれば、起きて出産途中の母子を守ってくれるからだ。
進化の途上において、体にいい食べ物を美味しいと感じた人は、生きのびる可能性が高かった。舌は、人間の祖先をおだてて、正しい選択をするように導いた。味蕾が脳に味を感じさせるのは、食べ物の取捨選択を誘発するため。
 人間の祖先がまだアフリカにいたころ、体毛がなくなると同時に、皮膚のすぐ下の細胞でメラニンが生成されるようになり、肌が黒くなった。その後、祖先の一部は暑い気候の土地を離れていったが、メラニンは相変わらず日光を遮り続けた。日光が遮断されると、体はビタミンDを生成することができない。日照量の少ない地域に移住した祖先のうち、肌が黒い人ほどくる病にかかりやすかったので、白い肌の遺伝子が優勢となった。
そもそも体毛を失わなければ、人類の肌の色はこれほど変化に富んでいなかった。
 人間と細菌、寄生虫の関係をよくよく考えさせてくれる本でした。
(2013年8月刊。1700円+税)

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