弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年12月25日

僕たちの国の自衛隊に21の質問

社会


著者  半田 滋 、 出版  講談社

 集団的自衛権についての解釈変更が閣議決定され、いよいよ日本の自衛隊が海外に出かけていって、アメリカ軍と一緒になって戦争をする事態が現実のものになろうとしています。憲法改正することもなく、そんなことをするなんて、まさに無茶苦茶ですが、自公政権そして安倍首相の暴走が止まりません。
 この本は、将来、戦場に行かされる君たちへ・・・、と題するものです。そんなの関係ない、なんて言って、のほほんと構えているわけにはいきません。いつ「赤紙」が来ないとも限らないのですから・・・。
 著者は、20年以上も、防衛省や自衛隊を取材してきた新聞記者です。海外にも、サマーワ(イラク)やアフリカなどの自衛隊の派遣先にも、現地へ足を運んで取材しています。
自衛隊員は22万5千人。陸上14万人、海上4万人、航空4万人。
 日本は、潜水艦を16隻もち、戦闘機は260機を保有している。
 日本の自衛隊は、護衛艦、戦闘機、戦車などの主要な武器が新しくて性能が良く、十分な訓練を積んでいて、自衛官の質と士気が高いことから、世界有数の軍事力をもつと考えて良い。
日本の防衛費は5兆円ほど。人件費・糧食費が44%を占めており、武器を購入する物件費は削られている。
 イージス護衛艦は1隻1400億円、潜水艦は500億円、F35戦闘機は1機100億円する。10式(ヒトマル)戦車は1両10億円。
日本に駐留するアメリカ軍の経費の8割近くを日本が負担している。これは1700億円を超す。
 アメリカの将兵の住む住居の水道・水光熱費までが日本が負担している。もちろん、私たちの税金が使われている。
 日本にいるアメリカ軍は、日本を守るためにいるのではない。日本安保条約によって、アメリカ軍はただ同然で日本にいるが、それでも、自分の都合のよいときに戻ってきてくれるはずだが、本当に戻ってきてくれるという保証はまったくない。なぜなら、自分の都合で、いつだって自分に米軍基地を離れて行動することを認めるという密約があるから。
 イラクのサマーワにいった自衛隊員は、アメリカ軍と一緒になって戦争しに行ったのではなく、あくまでも人道的見地からの復興支援活動だった。だから、自衛隊の装甲車には、大きな日の丸がついていて、漢字まで書かれていた。そして、個々の自衛隊員は、砂漠なのに緑色の服を着て、頭・肩・胸・背中の4カ所に大きな日の丸のワッペンを縫いつけていた。自衛隊員はアメリカの兵士とは違って、戦争に着た分けではないとアピールしたわけである。これは、憲法9条によって交戦権がないことによる制約。しかし、このことによって、イラクへ出かけた自衛隊員は一人の戦死者も出さなかった。それでも、過酷な戦場体験にさらされた自衛隊員の中には日本へ帰国したあと、合計28人もの自殺者を出した。
 集団的自衛権とは、結局、アメリカ軍と一緒になって、中近東などの戦場へ出かけること。
 そこでは、日本の青年が殺し、殺されることになる。戦死者が一人でも出たとき、日本の世論がどう反応するかは怖い。それが国防軍の機能強化に結びつかないという保障はない。
 12月14日の投票日当日、午後から久留米市で、著者を招いて講演会が開催されました。70人ほどの参加者があり、とても充実した内容でした。早ければ、2018年にも憲法改正のスケジュールが具体化される見込みだという話でした。
 その前に、こんな危険な安倍内閣を一刻も早く退陣させる必要がありますよね・・・。
20歳前後の若者向けの本として、とても分かりやすい内容です。ぜひ、お読みいただき、周囲の若者へ、一読をおすすめください。
(2014年10月刊。1300円+税)

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