弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年10月24日

日本軍「慰安婦」問題すべての疑問に答えます

日本史(戦前)


「女たちの戦争と平和資料館」 編著 、 出版  合同出版

 「朝日」叩きは異常です。済州島から「強制連行」があったかどうかだけが「慰安婦」問題ではないことは明らかです。にもかかわらず、「吉田証言」の嘘でもって「慰安婦」問題そのものがなかったかのようなキャンペーンは異常です。こうやって思想統制、マスコミ操作をしていくのかと思うと、背筋に冷たいものを感じます。
 日本軍がアジア各地へ侵略し、ひどいことをしたのは厳然たる事実です。それに目をつぶって、「美しい日本」だなんて、それこそ愛国心の欠如そのものではないでしょうか。あるがままの日本をきちんと受けとめ、少しでも住みやすい社会を目ざして努力することこそ、今を生きる私たちの責務だと私は思います。
 この本は、たくさんの資料と豊富な写真、そして加害者と被害者双方の証言によって、「慰安婦」問題を全面的に明らかにしています。60頁あまりの、カラー図版が満載で、すっきり分かりやすいテキストです。ご一読を強くおすすめします。
 「従軍慰安婦」という言葉は、「自らすすんで軍に従った」と誤解されかねない。そして、これは戦後になって使われはじめた「造語」である。そこで本書では「慰安婦」とした。
 国際社会では、より正確に実態を示す「日本軍性奴隷」という言葉が使われている。
「慰安所」には、三つのタイプがあった。一つは、日本軍直営の慰安所、二つは、軍が民間に慰安所の経営を委託した日本軍専用の慰安所、三つには、軍が民間の売春宿を日本軍用に指定した慰安所。いずれのケースでも、日本軍が慰安所経営について統制し、監督していた。
 軍側の証言の一つとして、中曽根康弘元首相の本がある。海軍の主計大尉だった中曽根康弘は、自著(『終わりなき海軍』)において、「私は苦心して、慰安所をつくってやった」と書いている。
戦後になって、オランダの戦犯裁判において、慰安所を開設した責任者である岡田少佐には死刑、6人の将校と4人の慰安所業者には2年から20年の禁錮刑が言い渡された。
 もと日本軍兵士の慰安所体験記と強姦したことの自白も紹介されています。
被害者となった女性の証言がいくつもあり、胸が痛みます。
 「慰安婦」が「高収入を得ていた」という点については、激しいインフレのせいもあり、結局のところ無価値でしかない「軍票」をつかまされていただけだった。このようにコメントされています。
 「慰安婦」とは、居住、廃業、選客、外出、休業の自由のない、まさしく「性奴隷」そのものだった。
 アメリカの新聞に日本人が「慰安婦」を否定する意見広告を出しました(2007年6月14日)。政治家でいうと、稲田朋美(自民党)、河村たかし(民主党)、ジャーナリストでは桜井よしこ、学者として、藤村信勝そして、作曲家のすぎやまこういち、などの人たちです。この人たちこそ、低レベルの日本人がいるという見本をアメリカに示したのではありませんか。私は、恥ずかしいです。
 しかし、肝心なことは、このような逆流の下で、「河野談話」が出されるとともに中学校の歴史の教科書にあった「慰安婦」記述が、今ではほとんど消えてしまっているという事実です。「美しい日本」を後世に伝えるという掛け声の下、不都合な真実は「抹消」(隠匿)されているのです。そんな国を愛するわけには生きません。いいところも悪いところもある。あるがままの日本をしっかり受けとめ、みんなで少しでも住みやすい国にしたいものです。
 国連の勧告(2013年)は、「複数の国会議員をふくむ国および地方の、高い地位の公人や政治家による、事実の公的な否定や被害者に再び心的外傷を負わせることが継続していること」に、深い懸念を持ち続けていると指摘しています。
 日本がますますおかしな国にならないように声をあげていきたいと思います。そのための教科書として絶好です。
(2014年7月刊。1500円+税)

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