弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年10月18日

波よ、鎮まれ

社会


著者  沖縄タイムス「尖閣」取材班 、 出版  旬報社

 尖閣諸島付近の漁業の実情を知ることのできる本です。この海域は、かつて日本人も中国人も共存共栄していた漁業だったのです。知りませんでした。
 偏狭な領土ナショナリズム思想をもつ活動家たちが魚釣島に上陸して緊張感を高めた。そして、石原慎太郎都知事(当時)が尖閣諸島の購入計画を発表して、緊張関係は一挙にエスカレートした。
 中国漁船の衝突事件では、日本政府も中国政府も対応を誤った。
 中国漁船による尖閣諸島周辺の操業は、日中漁業協定によって合法である。中国漁船と沖縄漁船のトラブルはほとんどない。起きるトラブルの大半は、台湾漁船のマグロはえ縄漁による漁具の交差・切断や漁具盗難である。
小さな徴発の応酬が戦争にまで発展した事例は世界にはいくつもある。
 マグロはえ縄漁船は、最前線で台湾漁船と激しい漁場の競合に直面している。
 尖閣海域は、高級魚(フエダイ、ムツ、ハチビキ科など)が捕れる好漁場だが、近年は漁場を利用する人はほとんどいない。
 尖閣海域は、石垣島から170キロ離れ、自船で行くと、10時間かかる。そして、尖閣諸島周辺の海は荒い。
 尖閣海域は、かつて沖縄と台湾の農民が魚を分けあう「生活圏」だった。この背景には、台湾の漁場が日本に比べて圧倒的に「視野」が狭かったことにある。
釣魚台周辺は、好漁場。サバの産卵地域でもある。
安倍首相のように、中国や韓国・北朝鮮について頭から敵視して、対話交流もしないというのは、信じがたいほどの誤りです。70人もの大企業代表国を引きつれて世界各地に出かけている安倍首相が、今もって中国にも韓国にも行ってないなんて、許せないことです。
(2014年4月刊。1600円+税)

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