弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年10月 7日

暴露

アメリカ


著者  グレーン・グリーンウォルド 、 出版  新潮社

 アメリカは世界の憲兵を気取っていますが、誰も頼んでいるわけではありません。自分勝手に他人のプライバシーを暴きたてて、軍事力でおさえつけているにすぎません。
でも、軍事力で押さえつけようとしても、テロリストを根絶できるものではありません。とりわけ、9.11のような自爆攻撃の前には、いかに強大な軍事力をもっていても無力だということが立証されています。やはり、軍事力に頼らないで、まわりくどいようだけど、たとえば貧困や病気をなくす努力といったものが求められていると思います。
 この本は、アメリカが勝手気ままに全世界をスパイ(監視)していることを、CIA工作員だった人が内部告発したものです。
 アメリカのブッシュ大統領が指揮した違法な通信傍受は明らかに犯罪行為であり、傍受された人々に対して、ブッシュ大統領は説明責任がある。
 1970年代の半ば、アメリカのFBIは、50万人ものアメリカ国民について、「潜在的な反乱分子」とみなして、政治的信条だけを理由としてスパイ行為をしていた。このときの対象者には、マルティン・ルーサー・キング・ジュニア、ジョン・レノン、ジョン・バーチ・ソサエティ(反共主義者の団体)などが含まれていた。
市民の通信を傍受できる能力は、傍受する側に計り知れない力を与える。そして、その力は悪用される。
 エドワード・スノーデンから最初の連絡があったのは、2012年12月1日のこと。
 初めて会うとき、携帯電話をもっていることを知ると、スノーデンは、バッテリーを抜くか、ホテルの部屋に置いてくるように求めた。アメリカ政府は、携帯電話やノートパソコンを遠隔地から起動させて、盗聴器として使うことができる。だから、決して盗聴されないためには、携帯電話については、バッテリーを抜くか、冷蔵庫の中に入れておくこと。ええっ、そんなことも出来るのですか・・・。怖いですね。
スノーデンは、高校を中退したものの、テクノロジーに関しては天与の才能があった。2005年には、CIAの保安要員からテクニカル・エキスパートに格上げされた。大学を出た歳上の同僚より、スノーデンは知識も技能も明らかに優れていた。
 2006年、スノーデンは、CIAの請負の立場から、フルタイムのスタッフになった。
 スノーデンは、CIAを離れてNSAに戻り、NSAの請負企業である「デル」社の従業員として働き、2009年には日本に派遣された。
 スノーデンは、CIAでもNSAの請負企業でも上級サイバー工作員となるための訓練を受けた。他国の軍隊や民間のシステムに侵入し、情報を盗んだり、攻撃準備を整えたりするための工作員だ。日本で集中的に訓練を受けたスノーデンは、他の諜報機関から電子データを守るエキスパートになり、正式に上級サイバー工作員となる。そして、国防情報局(DIA)の合同防諜訓練アカデミーの中国防諜コースでサイバー防諜の講師をつとめた。
 2011年、スノーデンは日本での勤務を終えてアメリカに戻り、メリーランド州にあるCIAの施設内で仕事をした。年収は20万ドル。2000万円ということです。すごい高給とりですね。
やがて、NSAの極秘スパイ活動を明るみに出すと同時に、既存のジャーナリズムの腐敗した空気に光をあてたいと考えた。
 世界じゅうの大陸に住む10億人以上の人々がフェイスブック、Gメール、スカイプ、ヤフーを利用している。それらの企業がNSAの請負企業と秘密協定を結び、ユーザーの通信データへのアクセスを提供していたのだ。
 NSAは、アメリカ国防総省(ペンタゴン)の軍部直轄組織であり、世界最大の諜報機関の一つである。NSAの職員は3万人。ほかに6万人と業務契約を結んでいる。
NSAは2種類の情報を収集している。コンテンツとメタデータだ。コンテンツとは、文字どおり人々の電話通話を聞くこと。
 2010年、アメリカの監視対象国には、フランス、ブラジル、日本、メキシコが含まれている。
 日本政府は、それを知っても、アメリカ政府に何の抗議もしていません。まさに、アメリカの属国です。これで、安倍は独立国の首相と言えるのでしょうか・・・。
 NSAは、メタデータの収集だけでなく、Eメール、閲覧履歴、検索履歴、チャットの収集にまで手を伸ばしている。
 しかしながら、現在のアプローチでは、諜報機関は、大量のデータの海に溺れるだけで、データを効率的に分類することさえ、ままならなくなっている。
 NSAの監視プログラムは、過剰な量の情報を提供しているだけでなく、国家をかえって脆弱(ぜいじゃく)にもしている。大量監視は、テロの予見や阻止をかえって困難にしている。
 9.11のあと、実はいろいろ予兆があったことが報道されています。通信傍受や盗聴は、それなりの知的レベルの分析官がいないと、宝のもち腐れにしかならないのですね。
 それにしても、ネット社会はまったく個人のプライバシーを奪ってしまうのです。恐ろしい世の中です。
(2014年5月刊。1700円+税)

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