弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年10月 4日

人生は楽しんだもの勝ちだ

人間


著者  米沢 富美子 、 出版  日本経済新聞出版社

 著者は数学と物理が大好きな少女だったようです。
 なにしろ、5歳のとき、同じように数学の好きな母親から「三角形の内角の和は二直角」というのを教わって、たちまち理解したというのです。恐るべき天才少女です。信じられません。いくつ言葉を並べても、そのときに受けた衝撃を余すところなく記述することは出来ない。
 「こんなに面白いものが世の中にあるのか」
 ええーっ・・・、だって、まだ5歳の幼稚園児なんですよ。強烈なショックを受けました。
 幾何の証明を理解する我が娘の姿に、母の体にも電気が走った。
 「これで、跡取りができた」
 母は、そう考えて、心が震えた。
 この著者の三人の娘さんたちも、やはり理系女子(リケジョ)になったようです。すごい遺伝子ですよね・・・。
 著者の父親は、昭和20年月、ニューギニアで戦死(享年30歳)。恐らく戦闘中に死んだのではなく、凍死、病死、飢え死にでしょう。戦争とはむごいものです。
 著者が小学5年生のとき、知能テストでIQ175。大阪府で一番になった。すごい少女です、まったくもって・・・。
 そして、中学では数学部に入ります。信じられません。そんな部があったなんて。24歳の数学教師が難問を一年生の著者に真剣勝負を挑むのです。
 連立方程式、因数分解、確率、統計。そして、高校の微分・積分まで・・・。
 いやはや、開いた口がふさがらないことは、このことです。
 私は、高校3年生まで理系コースにいましたが、2年生のとき、数学の才能がないことを自覚・痛感して、文系に乗り替えました。化学と物理は好きだったし、得意だったのですが、数学の「美しさ」を体感することが結局できませんでした。
高校で著者は泳げないくせに水泳部に入ったというのです。これまた大胆不敵なことです。そして、全国一斉模擬試験では、数学でなんとトップ。これまた、すごいと、読んでいるほうまで、他人事(ひとごと)ながら、快感を覚えますね。
 著者は京都大学理学部に入ると、湯川秀樹教授の講義を受けました。
 著者は日本物理学会の会長も務めたり、大活躍をしましたが、個人的には病気で「5年生存率」ゼロと診断されたこともあるのです。45歳のとき、乳がんで左右の乳房を全摘。そして70歳で甲状腺ガン。5回ものガン手術を受けたのに、手術の翌日から病室で論文を書いていたというのです。ここまでくると、神業(かみわざ)ですよね。そして、75歳になる今日も、元気なのです。
 第一に、自分の可能性に限界をもうけない。身のほど知らずということ。
 第二に、行動に移す。無謀とか、無鉄砲。
 第三に、めげない。脳天気だということ。
 第四に、優先順位をつける。
 第五に、集中力を養う。
 有限の時間と能力のなかで欲張って生きるには不可欠の要素である。一番大切なポイントは、自分の手で獲得すると決めてしまうこと。そうすると、世の中で怖いものは何もなくなる。
 人生は楽しんだもの勝ちだ。自分で、そうすることに決めれば結果は勝手に着いてくる。
 読んでいると、なんだか人生ってすばらしいね、ワクワクすることがたくさんあるんだねって思えるようになります。読んで元気の湧いてくる本です。
(2014年6月刊。1600円+税)

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