弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年10月 1日

法制度からみる現代中国の統治機構

中国


著者  熊 達雲 、 出版  明石書店

 中国共産党の党員は8513万人(2012年末)。1949年の建国時の19倍であり、全人口の6.3%を占める。労働者出身は8.5%で、農業・林業・漁業出身者が3割弱を占めている。そして、知識人党員が32%と、もっとも比率が高い。
 共産党員になるのは容易ではなく、煩雑な手続が必要であり、要件も厳しい。
共産党は、中央指導部に設置されている「中央政法委員会」を通じて司法とつながっている。中国は裁判権を独立した権力とみなさず、それを検察権、捜査権、行刑権等の権力に入れて政法権としてまとめて一括して指導している。最高人民法院は、この中で他の機関と並列する一機関にすぎず、特別な地位を与えていない。裁判所の地位は低い。行政機関の国務院、軍事機関の中央軍事委員会と比べ、裁判機関の最高人民法院、検察機関の最高人民検察院は、地位が何段階も低い存在である。裁判機関、検察機関の長は、いずれも共産党中央委員会の委員にすぎない。
 法律解釈権は、最高人民法院のみしか行使できない。人民法院の院長、副院長、各裁判廷の院長から構成される裁判委員会は中国の裁判所内のユニークな裁判組織だ。裁判委員会は、二つの業務を担当する。一つは、重大・難事件を討議し、判決を決定する。二つは、裁判の経験を総括する。合議廷は裁判委員会の結論に従って判決文を作成する。 人民法院で言い渡された判決は、人員法委員長及び裁判委員会によって容易に改正できる。裁判機関の独立は確立されていない。中国には20万人近い裁判官がいる。
裁判官は腐敗の多発する職業である。1995年から2013年にかけて、84人の裁判所所長と副所長が汚職腐敗で摘発された。2008年から2011年にかけて、712人、795人、783人、519人の裁判官が検挙された。集団腐敗事件が増加する傾向がある。2002年には、武漠市中級法院の13人裁判官と44人の弁護士が関与していた。中級法院は、腐敗がもっとも深刻である。
 中国の弁護士は23万人をこえる(2012年)、法律事務所も2万に近い。弁護士は弁護事務の独占権が認められていない。
 司法試験の受験者は年々増加し、2013年には40万人に達している。
 中国の司法の実情を知ることのできる本です。
(2014年6月刊。2800円+税)

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