弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年9月22日

歩いて行く二人

司法


著者  岸 惠子・吉永 小百合 、 出版  世界文化社

 パリのセーヌ川のほとり、ノートルダム寺院(カテドラル)をバックとして、岸恵子と和服姿の吉永小百合が並んで立つ写真が本の表紙になっています。
 私は「キューポラのある街」以来のサユリストです。この映画は1962年制作といいますから、なんと50年前です。私はまだ高校生のころです。
吉永小百合は、先日も映画「不思議な岬の物語」でモントリオール映画祭で受賞し、フランス語でスピーチをしました。すごい女優です。ますます好きになってしまいました。
そんな吉永小百合が24歳のとき、失恋して、単身フランスに渡ったといいます。誰でしょう、かの吉永小百合を振り切って別の女性と結婚しただなんて・・・。
 吉永小百合は反戦・非核のために声を上げてきました。今では原発なくせの声も高らかに叫んでいます。これまた、拍手・喝采です。この本のなかにも、何回も、その主張が展開されています。地道に、いつでも、どこでも核兵器や原子力発電所をなくそうという声を上げつづけている、その姿勢に心がうたれます。
 もう丸2年も、私はパリに行っていませんが、岸恵子の豪華なアパルトヘイトマンをふくめて、素敵なパリの写真がたくさん紹介されていて、楽しい対談集になっています。
 私は大学生のときから長くフランス語を勉強していますので、なんとか日常会話の最低レベルはこなせるようになりました。ところが、岸恵子によると、そのフランス語には4種類あるというのです。
 インテリや文化人が話す言葉、ブルジョワジーの言葉、プチブルの言葉、労働者の言葉。言葉を聞けば、すぐに違いが分かる。この人は、どういう家庭に育ち、この人は、どんな教育を受けてきたのか・・・。いくら隠しても分かる。
 では、私が学んでいるフランス語はこのどれなのでしょうか・・・。
自分が願うことを声に出したいと思っている。憲法のことも、九条があるから、日本はほかの国で人を殺さないですんでいるわけだし・・・。もし、世界中に九条が広がれば、それこそ核兵器だけではなくて、戦争がなくなる日が来るかもしれないという望みをもって・・・。
 日本は核武装をすべきかどうか議論するよりも、日本だけは核アレルギーでずっといて欲しい、いるべきだという思いがある。
やっぱり、日本ではもう原発はやめてほしい。地震の多いこの国は危険がいっぱいだし。故郷に帰れない福島の人々の現状をみていると、多少不便でも、すべてを電気に頼っていなかったころの生活に戻したほうがよい。その覚悟をもたなければと思う。
 経済のためになる原発は不可欠という発想は、もうやめたほうがいいと思う。
 安倍首相がトルコに原発を売るというけれど、それより前に、まず今の福島のトラブルを、トラブルをおこしている原発をきちんと収めてもらいたいと切に思う。
 日本政府が、核廃絶の署名に賛同しなかったのはおかしい。
 みんながあきらめてしまう前に、「私はこう思う」という声を上げていくことが大事だと思う。
 広島の原焼資料館の声のガイドはやらせてもらった。
 中国と日本はいろんなことで交流してきたのに、尖閣諸島問題で、いさかいをするというのは悲しい。どんなときでも、文化の交流を絶やしてはいけないと思う。
 一方で、恋に走りそうになる私がいて、それを、いっちゃいけないと止める私もいて・・・。
 皆さん、ぜひ手にとって、二人の写真と対談集を眺め、読んでみてください。心が洗われますよ。
(2014年8月刊。1800円+税)

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