弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年9月 1日

言葉をおぼえるしくみ

人間


著者  今井 むつみ・針生 悦子 、 出版  ちくま学芸文庫

 いま、私の孫(2歳)がコトバの羅列から文章を話せる段階に移行しようとしています。どうやって単語から文章になっていくのか、私にしても興味深いところです。動画で送られてくるので、その変化がよく分かります。
 高校3年生が知っている単語は6万語。18歳といっても、初めの1年間は話せないので、17年間で6万語を獲得したことになる。1日平均100語に近い。これは、今まで知らなかった言葉を、1日に10語覚えようと言われたときの大変さを考えると、とんでもない多さである。2歳から6歳までのあいだに、子どもは平均して1日6語、多いときには1日10語を覚えていく。
 2歳児の話すコトバで、意味の誤りは5%未満でしかない。子どもは、はじめて遭遇したコトバの意味をあれこれ迷わずに推論できる。これは、第一のパラドックスだ。
 そして子どもは、その領域の単語をすべて学習し終わるまで、個々の単語が使えないというわけではない。これが第二のパラドックスだ。
 生まれたばかりの子は、他の女性の声よりは、母親の声を好む。それは、胎内で耳にした音になじんでいることを示している。
 生後5日のフランスの乳児は英語と日本語のようにリズム構造の異なる外国語を区別することが出来た。
 子どもは、一種の「思い込み」をもってコトバの学習にのぞんでおり、その「思い込み」に合致したものを最優先して語の意味を考えている。
 4歳児は、形容詞が名詞(モノの名前)ではないことは分かっている。子どもは、2歳台で最初の助数詞を使いはじめる。それからしばらくしても、子どもの使える助数詞の種類は、なかなか増えない。5歳児になっても、助数詞を間違いなく使いこなせるレベルには達しない。
 外国人にとって擬態語の学習がとても難しいということは、音と意味とのあいだの「ぴったりくる」感覚を身体で覚えるためには、幼少時に日常生活のさまざまな状況で、大量の擬態語を聞き、自分で使うことが必要だということを意味する。
 日本語では、主語によって動詞の形が変わることはない。中国語では、動詞はそもそも活用せず、いつも同じ形だ。
 英語で「2犬」というが、日本語では「2匹の犬」というように、数えるための助数詞をつける。
 英語は、主語や目的語を省略しない。日本語は、主語を省略できるのが特徴だ。
 大人と一対一で向きあったとき、大人に対して自分の意見を述べるのは良くないこととする文化圏がある。日本も、その一つですよね・・・。そのような文化的圧力の下では、子どもは本当の力を発揮できない可能性がある。
赤ちゃん学って、本当に面白いですよね・・・。
(2014年2月刊。1400円+税)

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