弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年8月 8日

高齢者が働くということ

アメリカ


著者  ケイトリン・リンチ 、 出版  ダイヤモンド社

 アメリカはマサチューセッツ州のボストン郊外に針を製造する小さな会社がある。従業員40人は全員パートタイム。その従業員の2人に1人が74歳以上。従業員は10代から90代まで。30代、40代、50代の従業員もいる。
 従業員には医療給付も退職給付も支給されない。時給は9ドルからのスタート。勤務時間は従業員自身が決める。午前3時半から7時間はたらく従業員もいれば、午後3時にやってきて、4時間だけ働く人もいる。
 工場は2階にある。階段が19段ある。この階段をのぼること(のぼれること)が、ここで働くための暗黙の前提条件になっている。
ここでは互いに協力しようという意識、力をあわせて働き、共通の目標を目ざそうという意識が広く行きわたっている。
 かつて社会的地位の高いホワイトカラーの仕事をしていた従業員たちが、現在の自分の立場を単なる労働者だと認識している。
 ただし、大企業で長く働いてきた人は採用しにくい。
この会社は、2008年制作の映画「年年生活者株式会社」で紹介された。
 これだけ高齢者が多いのに、作業がちゃんと行われて業績もよい。低賃金にもかかわらず、誰もが社長を慕い、とても熱心に働いている。
 そうですよね。定年後も、自分の好きな時間に、思うように働きたいという気持ちは私にもよく理解できます。特殊な針を製造しているという有利な面もあることでしょう。それにしても、99歳の超老婦人が生産現場で働いているなんて、とても信じられません。
働くことの意味、そして、高齢者にとって働くことは人生を意義あるものにすることなんだと思わせる良書でした。
(2014年4月刊。2400円+税)

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