弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2014年8月 5日
集団的自衛権の何が問題か
社会
著者 奥平 康弘 、 山口 二郎 、 出版 岩波書店
集団的自衛権の問題点について、いろんな人が多角的に明らかにした本です。とても時宜にかなった内容です。
個人を離れた実体としての国家の権威を個人の上に置きたいと考える国家主義者にとって、国民に死を強いることのできない国家は、欠陥国家である。
日本をそのような欠陥国家にした最大の元凶は、敗戦後に押し付けられた憲法9条であり、これを改正することによって日本はまともな国家に復権できる。安倍首相は、このように考えている。
安倍は、政治家の名門であるが、祖父や父と違って、学歴エリートではない。だから、若いころから、祖父や父に対して劣等感を持っていたに違いない。
安倍とその取り巻きの政治家は、「つよい劣等感をもった少年兵」である。彼らは、実際の戦争も戦闘も知らないゆえに、戦争を封印してきた政治体制に対して過剰に暴力的になっている。
安倍首相は、1990年代以来の日本民主化の試みから生まれた鬼子である。安倍や橋下にとって、民主主義とは「決める人を決める」手続に矮小化されている。
民意の絶対化、政治主導の絶対化は自分自身が要するに民意そのものであるから、自分に反対するものは民意に反するという権力の絶対化につながる。
安倍首相の手法は、「必要は法を知らない」、目的を達成するためにはルールにかまっていられないという国際法の発想である。
安倍首相の言葉の裏に、「戦争の火種」を小さく生んで大きく育てようという騙しの手口が見える。
防衛省には、1993年につくられた、朝鮮半島有事に際して、日本人を救出する極秘計画がある。自衛隊は、米軍には一切頼ることなく、自衛隊だけで海外邦人を救出できることになっている。
集団的自衛権とは、自衛ではなく、「他衛」を指している。売られていないケンカを買ってでる。そうなんです。自衛ではないんです。
安倍首相の記者会見における発言は、
①戦争は突然に起きると思い込んでいる。
②日米の権力が同等だという前提に立っている。
③軍事技術の限界を無視している。
まさに、安倍首相は軍事オンチである。安倍首相のいう「限定」容認論とは、結局のところ、日本が本格的な戦争に巻き込まれる入口に過ぎない。
いま、日本人は、保守政治を自認する安倍首相の憲法破壊によって戦場に駆り立てられようとしている。「国民の戦死」と「戦費の増大」という巨大な負担は、日本人に重くのしかかる。21世紀の日本は、狂信的な首相の登場によって、世界が注視するなか不幸のどん底に転げ落ちようとしている。
安倍首相は、いまが千載一遇のチャンスだと考えている。彼は、自分が自民党の中で、多数派でないことを自覚している。
今の天皇は、戦後デモクラシーを全面的に容認している。
安倍首相は、集団的自衛権を本来の目的にそくして行使したとき、日本が戦争当事国となることにともなうリスクをまったく説明していない。
抑止力というのは、相手より強いことが前提となって成り立つ概念である。相手国だって、抑止されまいと強くなるはずで、安全保障のジレンマに陥る危険がある。
日本が攻められていないときに、集団的自衛権を行使すれば、日本が先に戦争の火ぶたを切ることになる。
今の日本社会には漠然とした「脅威」を共有する空気ができつつあるのではないか・・・・。陸海空すべての司令部レベルで米軍との一体化がなされることになった。
もし日本政府が歯止めを設けられないとなると、自衛隊を用いるにあたっての歯止めが国内には存在しない。それは、文民統制がきかないことを意味している。
安倍首相は、集団的自衛権を行使した「後」のことについてはまったく言及しない。日本が攻撃すれば、日本本土への報復攻撃を行われるだろう。
国の安全保障中心は、「攻められない」ようにする条件をいかにしてつくりあげるか、にある。
「怖いのか、臆病者め」と言われたとき、「はい、怖いです」と答えられる社会は健全だ。「平和ボケ」より、「軍事中毒」のほうが、はるかに有害だ。
憲法9条を集団的自衛権を認める意味に解釈変更することは、解釈の限界をこえ、立憲主義に対する挑戦である。
何度も、そうだ、そのとおりだと叫んでしまいました。
(2014年7月刊。1900円+税)
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