弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年7月 3日

日本軍と日本兵

日本史(戦前)


著者  一ノ瀬 俊也 、 出版  講談社現代新書

 第二次大戦中の日本の将兵は本当に強かったのか、敵側(この場合は、アメリカ軍側)がどう見ていたのかが紹介されています。結論からいうと、日本軍の将兵はそれほど強くはなかった。やっぱりフツーの人間だったということです。死を恐れない不屈の神兵などでは決してありませんでした。
 日本の将兵は勝っているときには勇敢だが、負けそうになると、とたんに死を恐れ、弱くなった。勝ち目がないと、明らかに死ぬのを嫌がり、総崩れになると、豚のようにわめいた。
 日本兵は、上官の命令どおりに動く集団戦を得意とする。個人の技能や判断力に頼って戦うのは不得手だ。
 日本軍の将兵を捕虜にすると、厚遇に感謝し、実に協力的になる。
 いったん捕まえた日本兵の捕虜は実に御しやすく、有用だった。尋問官がうまく乗せれば、喜んで、何でもしゃべる。命が救われたと知ると、そのお返しをしようとして、求められている情報を与えようとする。
 日本軍ほど宗教性の薄い軍隊はいない。世界史的にも異質な存在なのではないか。神道はあるわけですが・・・。
 ガダルカナル島で日本軍3万人あまりが倒れたが、そのうち3分の2は病気で死んだ。戦死者は1万人をはるかに下まわっている。他方、アメリカ軍の戦死者は1000人だけ。
日本軍の将兵の最大の弱点は、予期せざる事態に、うまく対処できないこと。戦闘機械の優秀な歯車ではあっても、急速に変化する状況に対応する才覚も準備もない。
 このような生来の弱点は、自由な志向や個人の自発性をきびしく退け、管理されてきた人生と、少なくとも部分的には関係がある。
 第二次大戦における日本軍の戦い方の実際を敵(アメリカ軍)側の資料によって紹介した貴重な本だと思いました。かの軍事オタクのイシバ氏にはぜひ読んでほしい本だと思いました。
(2014年1月刊。800円+税)

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