弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年6月20日

ドイツは過去とどう向きあってきたか

ドイツ


著者  熊谷 徹 、 出版  高文研

 今の日本では、戦前の日本が海外へ侵略戦争を仕掛けたこと、数多くの残虐な行為をしたことを直視し、なるべきありのまま後世に伝えようとすると、それは「自虐史観」だ、日本人の誇りを持てなくなるから止めろという声がかまびすしく湧きあがってきます。なにしろ、政府が音頭をとって、有力マスコミを使うものですから、声高な潮流になるのも当然です。しかし、ドイツでは、少なくとも政府はそういう態度ではありません。
 ブラント元首相は、若者に歴史を語り継ぐ意義を、次のように語った。
 若者も歴史の大きな流れのなかに生きているのだから、過去に起きたことが気分を重くするようなものであっても、それを伝えることは重要だ。ドイツは戦前、周辺諸国に大きな被害をもたらした。したがって、今後のドイツ政策が国益だけでなく、道徳をも重視することをはっきり示す必要がある。自国の歴史について、批判的に取り組めば取り組むほど、周辺諸国との間に深い信頼関係を築くことができる。
 本当にそうなんですよね。「自虐史観」だという人は、日本は悪いことなんかしていないと開き直るばかりです。そんな反省のない態度では、外国から信用されるはずがありません。
 西ベルリンでもっともにぎやかな地区の広場には、「我々が決して忘れてはならない恐怖の場所」として、アウシュヴィッツ、トレブリンカ、マイダネクなどの強制収容所の名前を記した警告番が立てられている。
ドイツの小学生が学ぶ教科書には、ナチスがドイツを支配していた時代に関する記述が細かく、子どもには残酷すぎるのではないかと思われるほど、生々しい写真や証言が載せられている。
 そして、高校の歴史の授業は、暗記ではなく、討論を中心としてすすめられる。
 ドイツでは、ナチス式敬礼を行うことは禁じられ、アウシュヴィッツを否定すると法律違反になる。最高5年の禁錮刑に処せられる可能性がある。
 このところ、ドイツでもヒトラーを信奉する極右が若者のなかに増えているという逆流現象もあるようですが、先ほど紹介した政府の取り組みは日本でも実践すべきものだと思います。そのためには、まずは安倍首相の引退を急ぐ必要があるのでしょうね・・・。
(2007年4月刊。1400円+税)

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