弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2014年6月10日
憲法学再入門
司法
著者 木村 草太・西村 裕一 、 出版 有斐閣
憲法についての、決してやさしくはない本です。正直なところ、私には難しすぎるところがたくさんありました。一見、日常会話のような体裁なのですが、その内容たるや、きわめて高度な論理展開なので、とても私はついていけませんでした。
といっても、実は、司法試験にパスするためには、このような論理展開が求められているようなのです。ということは、今の私が司法試験を受験したら、少なくとも憲法科目については合格するのは覚束ないということのようです。トホホ・・・。
著者の2人は、いずれも同世代。30代半ばでしょうか・・・。私が、この本を読んで、少しは理解できたと思えるところを、いくつか紹介します。
「公共の福祉」条項の趣旨は「公共の福祉」を理由とすれば人権を制約できるという点にあるのではなく、人権を制約するためには、「公共の福祉」=「公権」を理由としなければならないという制限を立法府=国家権力に課した点にある。
すなわち、「公共の福祉」の名宛人を国民から国家へと転換させたのである。「公共の福祉」は、人権の制約根拠ではあるが、正当化事由ではないという現在の支配的な見解は、このような意味において、理解できる。
「公共の福祉」が、人権の限界ではなく、国家権力の限界であり、国家権力に対して人権制約の「理由」を要求する概念であるとすれば、ここでの焦点は、自由の側にではなく、自由を制限する国家行為の側にこそある。
人権とは、他者のいない世界において独善的に謳歌されるものではなく、他者によってそれが傷つけられたときに、「苦痛をこうむる人間の異議申立」としてのみ立ち現れるものだろうからである。
プライバシーの権利は、かつては、一人で放っておいてもらう権利として理解されていた。それが、情報化社会の進展により、「個人が道徳的自律の存在として、自ら善であると判断する目的を追求して、他者とコミュニケートし、自己の存在にかかわる情報を開示する範囲を選択できる権利」としてとらえる自己情報コントロール権説が通説化している。さらに、最近では、「人間が多様な社会関係に応じて、多様な自己イメージを使い分ける自由をプライバシーと呼ぶ」自己イメージ・コントロール権説があり、また、「プライバシーの保護を社会的評価から自由な領域の確保としてとらえる」社会的評価からの自由説が有力に唱えられている。
プライバシーと思想の自由は、それらが侵害されることは「自分が自分であることを自分で決める」という原則が否定されることを意味するという点において共通している。
ここらあたりは、私にも、なんとなく分かった気がしてきます。
現在の護憲派と改憲派との対立もまた、知性主義と反知性主義との対立という様相を示している。
私からすると、安倍首相のような改憲論の主張は明治憲法の悪しき伝統への先祖帰りでしかなく、歴史の進歩をまったく無視しているという点で、反知性主義そのものです。いかがでしょうか・・・?
宮台真司は、「昨今の判事って、本当に馬鹿だよね。間違いなく、私よりも法理論や法哲学を知らない」と語った、とのことです。弁護士として40年、また、裁判官評価システムに関与している体験からすると、裁判官が全員「馬鹿」だなどということは決してありません。ところが、上ばかり見ているとしか思えない裁判官が決して少なくないように思われます。また、家庭生活をふくめて、人生を豊かに謳歌しようという思考の裁判官も多いとは決して言えません。上(高裁や最高裁)のほうを気にしすぎて、自分の信念をもって、合議体であれば後進・若手の意見を取り入れることもなく、ばっさり切り捨てる判決のいかに多いことでしょうか・・・。
少しだけは理解したつもりになって紹介しました。それにしても、学者ってこんなことを一日中、議論しているのでしょうか。これでは私には一日たりとも学者なんてつとまりません・・・。
(2014年3月刊。1900円+税)
日曜日の午後、庭に植えていたジャガイモを掘り出しました、すぐ近くで、ウグイスが高らかに鳴いています。梅雨入りしたあと、なぜか雨が降りません。
いくらか小ぶりのジャガイモが大きなザルで2杯分とれました。つやつやして、美味しそうです。
夜、8時すぎ、暗くなってホタルを見に行きました。もう終わりかけのようで、チラホラ飛んでいました。
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