弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年5月 9日

絞首刑は残虐な刑罰ではないのか?

司法


著者  中川智正弁護団 、 出版  現代人文社

 いま、先進国のなかで死刑が残っているのは、日本とアメリカのみ。中国も死刑大国ではありますが・・・。韓国では死刑は長く停止されています。ただし、北朝鮮では、先日、ご存じのとおりナンバー2が銃殺されてしまいました。
 日本は、平安時代、810年の薬子(くすこ)の変のあと死刑を停止し、1156年の保元の乱で復活するまで死刑はありませんでした。
 最近、アメリカの死刑執行に使われる薬物の入手が困難になっているというニュースが流れていました。アメリカでは、電気椅子による処刑はなくなっているのです。薬物を使った二段階方式の死刑執行です。はじめに、いわば睡眠薬を注入し、次に薬物で死に至らしめる方式です。より苦しみを少なくするための工夫です。
 そして、日本はずっと絞首刑による死刑執行です。それに立会う人々がいます。検察官もその一人だと知って、私は検察官にならずに良かったと思いました。
 死刑の執行方法のなかで、絞首刑は次の二点で特に残虐である。
 第一に、絞首された人の意識は少なくとも5秒から8秒、あるいは2分から3分間も続き、激しい肉体的な損傷と激痛を伴う。脳の死は早くても4分から5分かかる。
 第二に、絞首刑を執行したとき、いつ意識を失うかは人それぞれであり、5秒で失う人もいれば、3分間は意識があるかもしれない。また、首が切断されるかもしれない。
古畑種基・医学博士は絞首刑をもっとも苦痛のない、安楽な死に方だとしたが、これは明らかな間違いである。脳内の血液循環が直ちに停止したとしても、脳内には多量の酵素が少なくとも数秒間は意識保つのに十分なだけ残っているので、意識の消失が瞬間的に起こることはない。また、日本の絞首刑について、執行によって頭部離断が起こりうる。
 現代日本の世論は、死刑廃止なんてとんでもないということのようですが、それは死刑執行の現場が公開されていないことにもよるのではないでしょうか。そして、死刑執行を担当する拘置所の職員の心労は簡単には回復できないものがあると思います。
 いずれにしても、日本の死刑執行の実情と問題点は、もっと知られていいことだと思います。今は、あまりに秘密主義で、多くの人が漠然と死刑制度を支持しているとしか思えません。
(2011年10月刊。1900円+税)

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