弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年4月23日

日韓・歴史問題をどう解くか

朝鮮(韓国)


著者  和田 春樹・金 泳鎬 ほか 、 出版  岩波書店

 1965年の日韓条約には、批判されるべき重大な欠陥があった。日本側に植民地支配に対する反省がなく、それがもたらした損害と苦痛に対する謝罪がなく、補償をおこなう考えがなかったことである。
 日韓条約は、歴史認識の対立をそのままにして、併合条約の無効に関する条約第2条を日韓が都合のいいように訳し、解釈することを認めることで成立した。
残されている、解決を必要とする問題は四つある。第一に、強制された併合条約は当初から無効であったと解釈すること、第二に、日本側は自発的に、道義的に追加的な償いの行動を補完的にとること。第三に、日韓請求権協定で解決されていない深刻な問題があること、たとえば慰安婦問題や在韓被爆者への援護問題、サハリン残留韓国人の帰国問題などについて、日韓首脳会談で協議すること、第四に、独島・竹島問題についての合意。
 なーるほど、いろいろの問題がまだまだ未解決のまま残っているのですね・・・。
 併合条約の有効性の問題を政治家や官僚たちにまかせることはできない。そうではなく、市民社会が乗り出すべき問題である。これは、過去からの要請というより、未来からの要請なのである。
 韓国併合条約には、形式上も手続き上も、重大な欠陥が認められる。大韓帝国の宝印奪取、皇帝の署名偽造、公表勅諭の捏造など。そして、韓国では、国内手続を経ておらず、皇帝が裁可することもなかった。
 したがって、韓国併合条約は、「締結されてもいなかった」のである。
日本の敗色が濃くなっていた1944年12月、朝鮮・台湾の居住者への参政権付与案が検討され、翌45年4月に、選挙法が改正された。しかし、朝鮮の衆議院定数はわずか23人。有権者も直接国税15円以上納付に限定された。
 それまで、朝鮮人は立法にも予算の審議にも関与できなかった。
 「韓国併合」100年を記念して日韓知識人の共同声明が出された(2010年5月10日)。翌11日の韓国各紙は、この共同声明を大きく報道した。ところが、日本では、朝日、東京そして共同通信のみが報道するだけ、しかも小さな記事でしかなかった。
 2010年8月10日、菅直人首相は、談話を発表した。
 「日韓併合条約が締結され、・・・・植民地支配が始まった」
 「政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反しておこなわれた植民地支配によって、国と文化を奪われた」
 いま、本屋の店頭には、韓国と韓国人をバカにするような本が平積みになって大々的に宣伝され、売られているようです。まさしく「ヘイト・スピーチ」が公然と大手を振って、まかりとおっています。恐ろしいことです。隣国とは、たとえ意見の違いが大きくても、仲良くしなければいけません。「敵」ではないのです。
 先日、私は娘の結婚式のためにソウルに初めて行ってきました。みんな平和に生きています。それが、私たちの願いです。戦争に駆り立てて金もうけしようなんている連中に乗せられてはいけません。
 植民地になって朝鮮はかえって良かったとか反映していたと主張する日本人がいます。残念でなりません。自由と独立のないところで、どうして「繁栄」があるというのでしょうか。日本人は開き直ってはいけないと私は思います。
 反省すべきところは反省し、償うべきは、きちんと償うべきなのです。それが未来への道を切りひらいていくことになります。
(2013年12月刊。2900円+税)

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