弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年4月22日

小選挙区制は日本を滅ぼす

社会


著者  浅川 博忠 、 出版  講談社

 庶民いじめで大企業優遇の消費税の税率アップ。本当に痛いです。平和な日本の金看板をひっぺがす武器輸出三原則の緩和、そして集団的自衛権行使の容認。また、教育統制の強化。さらには、日本の農業と医療をつぶしてしまうTPP。
 どれをとっても、こんなにひどい内閣はないと思うのですが、不思議なことに安倍内閣の支持率は60%もあります。いったい、日本って、どうなっているんでしょう・・・。
 NHK会長をはじめ、マスコミのトップには安倍首相のお友だちばかりのようです。月に1億円を使い放題という内閣官房機密費による超高級料理店での接待がきっと効果をあげているのでしょうね・・・。
 そして、国会は安倍首相を応援する人ばかり。なんで、そうなるの・・・。そのカラクリ(仕掛け)は簡単です。一人区がほとんどの衆議院選挙だと、少数意見なんて反映されません。
 だから、この本のタイトルにあるように、小選挙区制は日本を自滅させてしまうというものです。種の多様性を許さない生物は、いずれ絶滅するしかありません。環境の激変に対応することができないからです。
 小選挙区制が導入されてからの6回の総選挙において、少なくとも3回は、国政は風まかせになり、議員たちは「風にそよぐ葦(あし)」と化している。
 小選挙区制のもつ恐ろしさを知ると同時に、その果実をいちはやく得たのは、小沢一郎ではなく、小泉純一郎だった。
 小選挙区制を実現したときにさかんに言われていた「政治改革」とは、その本質は竹下登と小沢一郎の権力闘争だった。竹下とのケンカにおいて、小沢が「飛び道具」として使ったのが選挙制度であり、小選挙区制を中心とする制度だった。
田中角栄も小選挙区制の導入にとりくんだ。そのときの狙いは、憲法を改正しようとするときに最大の強敵と目される日本共産党つぶしだった。
 たしかに小選挙区制の下で、日本共産党の議席は激減しました。比例部分の議席が少し残っているので、日本共産党の議席が今もなんとかありますが、その比例部分を大幅に削ろうとしている策動が根強くあります。
 国民のなかの価値観がこれほど多様しているのに、国会の中は、依然として古い自民党路線オンリーのようで、残念でなりません。
政治改革イコール選挙制度の改革に対して、小泉純一郎は猛烈に反対した。
 小選挙制が導入されようとしていたとき、マスコミは、それに反対する人々を「守旧派」と呼んで、たたきつけ、足をひっぱった。つまり、守旧派なる語(コトバ)が、あたかも悪者を示すかのように多用された。
 小選挙区制度の弊害がこれほど明らかになっているのに、推進派だった人々から表だっての反省の弁や釈明がなされていない。これは、きわめて残念な現象だ。
 小選挙区制には、民意を反映すると言いながら、極端から極端へと走りすぎるリスクがある。
 小選挙区・比例代表並立制は、政権交代が容易になるとして実施された。
しかし、結局のところ、政権交代こそ実現しましたが、それで日本が良くなったという実感はありません。かえって、格差社会が拡大し、弱い者いじめの政治がひどくなっただけのような気がします。
一区3人の中選挙区制で妥協するのが、日本では最適だろう。
 政党助成金もひどい。総額320億円もの税金を適当に配分している。
これほどひどい小選挙区制です。ぜひ、一刻も早く、元の中選挙区制に戻したいものです。
(2014年3月刊。1400円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー