弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年4月17日

前夜、日本国憲法と自民党改憲案を読み解く

司法

著者  梓澤和幸・澤藤統一郎ほか 、 出版  現代書館

 自民党の改憲案のもつ問題点が縦横に語られています。
 安倍首相の改憲にかける執念深さは、異常としか言いようがありません。それは、自民党の要職をつとめた人々からもやり過ぎだとして警戒されているほどです。野中広務、古賀誠、山崎拓などです。
 アメリカ政府からも「失望した」とか、ケネディ駐日大使は安倍首相と会おうとしないとか、さまざまな圧力が加えられています。安倍首相は、今のところアメリカの圧力に屈せず、自分の信じるとおり敢行しているようです。でも、そんな「対米自立」は、かえって日本人には迷惑なことなのではないでしょうか・・・。
自民党の改憲草案は、ひどく時代錯誤そのものです。
 天皇を元首とすることは、限りなく君主主権に近づけるということ。
今どき、君主主権だなんて・・・。復古調も、ここまでくると、少し狂っているという感じがします。だいいち、いまの天皇自身が、そんなことを望んでいませんよね。要するに、天皇を道具として使いたいために、その下心から、勝手に天皇を「元首」に持ち上げようとしているのです。天皇を心から崇敬しているとは決して思えません。自分の手玉(てだま)として使いたいというだけです。天皇を、そんなに軽々しく扱うなんて、私だって許せません・・・。
 自衛隊を「国防軍」に変えるという自民党の改憲草案は、軍事組織として、ある程度の自由をもって外の世界へ出ていくことを許すこと。
 要するに、日本人の集団が「国防軍」として海外へ戦争しに出かけ、そこで外国の人々を殺し、また外国の人から殺されるということです。「フツーの国」になるということは、戦死者が「フツー」に、すぐ身近に存在するということになります。これって、社会の変質ですよね。
 自民党改憲草案は、現行憲法が「すべて国民は、個人として尊重される」としているのを、「すべて国民は、人として尊重される」に変えるとする。「個人」を「人」に変えるというが、「人」というのは、非常に抽象化されたもの。動物と人という感じだ。それに対して、「個人」は個性をもっている。一人ひとりの個人と「人」とは、ニュアンスがまったく違う。
 原子力発電所(原発)を設置し、稼働する人たちは、戦争を想定していない。そして、防衛、安全保障、戦争を考える人たちは、原発のことを想定していない。
 北朝鮮は、ミサイル一発を原発に撃ち込めば、日本を地上から消し去ることができると言った。本当に、そのとおりなんです。とても怖い現実があります。
 安倍内閣は、北朝鮮のテロの危機を声高に叫んでいますが、ミサイルによる原発攻撃には口をつぐんでいます。防ぎようがないし、本当にそうなったら、日本は「おしまい」だからです。真の怖さは隠して、その一歩も二歩も手前の「怖さ」だけを言いたてて、防衛産業の売り込みを図っているのです。まったく、許せません。
 自民党の改憲草案は、私は何度も読み返しました。草案の前文なんて、お話にならないほどの格調低さです。出来が、まったく違います。ぜひ、見比べてください。
 それにしても、改憲草案の全条について、こうやって詳しく検討してくれて本当にありがたいことです。
(2013年12月刊。2500円+税)

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