弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年4月16日

人権は国境を越えて

司法


著者  伊藤 和子 、 出版  岩波ジュニア新書

 国際人権団体であるヒューマンライツ・ナウの事務局長を務める女性弁護士が若者に向けて書いた本です。
 ヒューマンライツ・ナウは、2006年に発足し、今では700人以上のメンバーを擁している。NPO法人となり、2012年には国連で発言権のあるNPOとして登録されている。
 著者が弁護士になったのは20年前の1994年のこと。高校生のころから弁護士を志望して、大学は法学部を選んだ。司法試験には、3回目で合格。必死にがんばったのでした。
 弁護士1年目の1995年9月に、北京での世界女性会議に参加して世界の人権状況に目が開かされた。
 1996年、フィリピンに現地調査に行った。日本人男性がフィリピンで子どもたちの売春をしていることを知り、告発した。
 そして、日本国内の冤罪事件(名張毒ぶどう酒事件)、難民認定事件などにも関わった。
 2001年の9.11のあと、2002年1月にはパキスタンへ出かけて難民キャンプの実情を調査しています。本当にたいした行動力です。すばらしいですね。
 そこで聞いた難民女性の言葉が胸を打ちます。
 「家に帰りたい。平和がほしい。尊厳を取り戻したい。私たちは、これまで平和に暮らしてきたのだから・・・」
 平和は、失ったときに、その大切さが実感できるのですね。いまの日本の平和な生活を大切にしたいものです。
 2004年から2005年にかけて、アメリカはニューヨーク大学のロースクールに留学した。若いって素晴らしいですね。そこで、国際人権法をさらに勉強し、日本に帰ってきました。
 ビルマ(ミャンマー)、カンボジア、フィリピンに出かけ、現地の法律家との交流を深めます。
 深刻な人権侵害が世界各地にあり、それとたたかう法律家と連帯する活動をすすめています。
 そして、日本国内でも、3.11後の救援活動に身を投じます。こんなに勇気ある若い弁護士がいることを知って、ロートル弁護士である私も元気を出さなくては、と思いました。
 ぜひ、多くの若者そして、子どもたちに読んでもらって、あとに続く弁護士が一人でも多く増えることを願いたいと思いました。
(2013年10月刊。820円+税)

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