弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2014年4月 2日
北朝鮮経済のカラクリ
朝鮮
著者 山口 真典 、 出版 日系プレミアシリーズ
北朝鮮が日本にとって不気味な国であるのは間違いありません。ところが、安倍首相は、そんな日本国民の心理を利用して、北朝鮮にミサイルを先制攻撃できるようにしようというのです。それは戦争です。恐ろしいことです。北朝鮮が反撃として、日本に50以上ある原発にミサイルを撃ち込んだら、たちまち日本は破滅してしまいます。やめてください。安倍首相の危険な「火遊び」につきあわされて、日本という国が消滅するのを指をくわえて眺めているわけにはいきません。
この本は、北朝鮮経済のいびつな構造に迫っています。
金正恩は、2012年4月に朝鮮労働党第一書記に就任し、主要な最高権力ポストをすべて引き継いだ。
金正日の「遺言状」のなかには、海外銀行の資金は金正恩が管理しろ、原子力発電所を少なくとも3個は建設しろ、というのがあるそうです。前者は既に実現しているのでしょうが、後者はどうなのでしょうか・・・。
父親の金正日の哲学は、権力を持つ第二人者(ナンバーツー)の台頭は絶対に許さないことにあった。頂点に立つのは、最高指導者ただ一人だけで、残りの側近は、全員を水平的に配置して、互いに牽制させた。自らを脅かす勢力が台頭してくる前にその芽を摘む。
金正恩が、先日、張成沢を銃殺してしまったのも、その哲学を実践したということですね。
北朝鮮には、国の公式経済とは別に、予算数字に計上されない非公式の経済が存在する。軍需経済と王室経済だ。軍需経済は、労働党の中央軍事委員会と軍需工業部が統括し、第2経済委員会が傘下の武器工場や商社、金融機関などを通じて執行する。
王室経済は、単に金正日ファミリーがぜいたくするためだけの資金ではない。自らの体制を支えてくれる幹部の忠誠心をつなぎとめる目的のための仕組みだ。この秘密資金を管理するのが労働党39号室だ。ところが、近年、北朝鮮では指導部の把握できない「ヤミ経済」がどんどん膨らんでいる、蔓延する「賄賂文化」もヤミ経済の一部だ。
北朝鮮の社会は、出身成分でも将来が決まる。成分は大きく分けて三つ。核心階層、動揺階層、敵対階層。日本からの帰国者は敵対階層という低い成分に分類され、日常生活でもいろいろな制約を受ける。
どんなに庶民が貧しくても、平壌に住む幹部の生活さえ保障していれば、体制が揺らぐことはないとされる。
平壌市民250万人のうち、十分な食料品や生活用品の確保など、手厚い庇護を受けている党や郡の幹部が50万人いる。なかでも2万人の高級幹部は、優遇されている。
エリートたちの忠誠をたもつためには、現金や物資にあわせて年に10億ドルが必要だ。
北朝鮮の全人口は2400万人。核心階層と労働党員が300万人いる。
北朝鮮の庶民が沈黙している理由の一つは、徹底した相互監視システムにある。
収容所にも二つある。生涯出所できない「完全統制区域」と、比較的罪の軽い政治犯で出所の可能性がある「革命化区域」。
北朝鮮で軍のクーデターが起こる可能性は、まずない。その根拠は、ローヤルファミリーを警護する護衛司令部の存在。護衛司令部は、陸海空あわせて5~6師団の10万人。これは人民軍から切り離して、軍よりも最新鋭の武器や装備を供給した。
軍は、クーデターを防ぐため、陸・海・空軍の指揮命令系統を別々にしている。
平壌付近には、大規模な兵力を配置していない。軍の部隊が決定を下す際は、3人の指揮官全員の合意が必要だ。
金正日の外交術には一定のパターンがあった。緊張を高めたあとで、少しだけ譲歩し、最大限の見返りを得る。日米韓の連携を揺さぶる。
金正日の統治は、絶対に自分から指示しないことが特徴だった。失政の責任は全部を部下が負う。最高指導者の決定に間違いはありえないのだ。
北朝鮮は、武器輸出で年に1~4億ドルの外貨を稼いでいる。アヘンや覚醒剤の生産もしていた。アメリカ・ドルの偽造もしていた。ニセ・タバコもつくっていた。
北朝鮮は海外出稼ぎ大国である。世界40ヶ国に5万人の労働者を派遣し、年間3億ドルを稼いでいる。
北朝鮮人民軍は117万人。予備役は740万人をあわせると、全人口2400万人の4割が軍人となる。男性人口の1割は軍人だ。
北朝鮮兵士の平均身長は韓国兵に比べて15~20センチも低い。これは栄養状態の違いによる。
北朝鮮という国が、いつまでもつのか分かりませんが、本当に異常な状況だと思います。そして、韓国も中国も、そして日本もアメリカも、すぐに国(金正恩体制)が崩壊しないように支えているというのが現実なのではないでしょうか・・・。
そして、脅威だけはあおって、安倍首相のように利用しているのです。
(2013年12月刊。850円+税)
月曜日に東京に行ってきました。日比谷公園の桜が見事に満開でした。しだれ桜もありましたが、これもソメイヨシノなのでしょうか。奈良から来ていた弁護士が、うちは5分咲きと言っていました。大阪は、なぜか東京より遅いのですよね。
3年近くつとめていた日弁連の委員長職から解放されました。重責で肩の重味がとれて、ほっとしています。
わが家の庭のチューリップも満開です。庭のあちこちに500本のチューリップの花が咲いて、春到来をまさしく実感させてくれます。
紫色の豆粒のような、ハナズオウの花も咲いています。