弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年3月30日

折られた花

日本史(戦前)


著者  マルゲリート・ハーマー 、 出版  新教出版社

 日本軍が「従軍慰安婦」としたのは、朝鮮・中国の女性だけではなかったのです。インドネシアを占領した日本軍は、そこにいたオランダ人女性を強制的に慰安婦にしたのでした。
安倍内閣は、例の河野談話を見直し、なんとか強制連行ではなく、女性が任意に応じて、金もうけをしていたとしたいようです。とんでもないことです。だまされて連れていかれた人(女性)を「強制連行」ではなかったというなんて、ペテンそのものではありませんか。
 彼女たち全員に共通していたのは恥辱感だ。若いころに自分の身に降りかかったことを恥ずかしく思っていた。悲しみと怒りが、こうした女性たち全員の心に深く根ざした。そして、日本政府が日本軍による強制売春の歴史をたびたび否定するたびに、この女性たちは傷ついた。
 インドネシアは、旧オランダ領東インドであり、推定して3万人の現地女性が日本軍の売春宿で強制的に使役された。
 1942年2月、日本軍はジャワに上陸し、オランダ王国軍は降伏した。
 オランダ王国軍の将兵は、日本軍の捕虜となり、鉄道工事のためにタイへ送られた。
 アメリカ、イギリス、オーストラリアの兵士もふくめ、総数4万2000人の男たちが日本軍の捕虜となった。
少女や若い女性は日本語の書類に、訳も分からないままサインさせられた。それは、「自由意志でやります」という書類だった。性経験のなかった少女たちが、来る日も来る日も、確実に20人ほどの兵士たちに犯された。やりあうのはあきらめ、犯されるままになった。
 1944年のはじめ、オランダ人の少女や女性が抑留所から連行されて、売春を強制されるに至った。200人から300人のオランダ国籍の女性が日本軍用の売春宿に入れられた。
 終戦後、家に帰ったとき、母親は娘を信用しなかった。そして性病が彼女を苦しめた。
箱入り娘として教育を受けてきた彼女は、売春宿なるものが存在することすら知らず、ましてそこで何が行われているかなど知っているはずもなかった。彼女たちは、文字どおり無邪気で純真な少女たちだった。少女たちは最後には抵抗するのを止めた。日本軍は、彼女たちの親がどこの抑留所にいるかを知っていたから、家族に累が及ぶのを怖れたのだ。いつまでも厄介な娘は、一般兵用の売春宿に移された。
戦前戦中に日本軍が海外でしたことを知ると、それは自虐史観だと指摘されるなんて、おかしなことです。真実にしっかり向きあってこそ、ありのままの日本を知ることです。でたらめな歴史観にまどわされたら目も曇ってしまいます。
 日本軍って、アジアの各地で聖戦と称して、本当にひどいことをしたんだと痛切に感じます。
(2013年12月刊。1300円+税)

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