弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年3月 2日

「愛国」の技法

日本史(戦前)


著者  早川 タダノリ 、 出版  青弓社

 戦前の日本が「戦争を愛する国」へ向かうためには、権力と軍部による並々ならぬ思想動員があったことがよく分かる本でした。それにしても、驚くべき発見がいくつもありました。
 その一。日本人には、昔から日の丸を掲げる習慣があったわけではないということです。最近では、正月になっても、「日の丸」を掲げている家庭はまず見あたりません。今では、日本にそんな習慣はないと断言してよいでしょう。そして、実は、それは昭和10年代になっても同じことだったのです。そこで、政府は国威発揚キャンペーンの一環として、「日の丸」を掲げるように大々的に取り組んだのでした。
 なーんだ、という気がしました。いま、安倍政権は、憲法を改正して「日の丸」を国旗と定めようとしていますが、とんでもない時代錯誤でしかありません。ところが、教職員と子どもの思想を統制することだけは明確です。
 その二。戦前には徴兵保険というのがありました。富国徴兵保険相互会社というのがあって、徴兵されると、保険金がおりるというものです。これで入営に要する費用をまかなったのでした。この保険会社は大もうけしたようですが、いまでも「フコクしんらい生命」として現存しています。
 その三、出征兵士の妻の姦通問題に警察が目を光らせていて、その妊娠状況まで警察が管理していました。個人のプライバシーより出征兵士の士気を重んじていたというわけです。
 その四。これが一番の驚きでした。軍人稚児隊というものがあったというのです。写真があります。千葉県流山市にできたもので6歳とか7歳の少年勇士11人から成る部隊があったとのこと。この当時、子どもの軍服は大流行していた。七五三などのとき、ありふれた服装だった、というのです。
 陸・海軍も「軍事思想の涵養に資する」として、大将服や将校服の着用を認めていた。
 世の中が軍国主義に一色に染まるとこういうことが起きるのですね。こんな世の中にならないように、今がんばりましょうね。
(2014年1月刊。2000円+税)

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