弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年2月21日

福島第一原発・収束作業日記

社会


著者  ハッピー 、 出版  河出書房新社

 福島第一原発で今も働く現役作業員である著者が発信しているツイッターが本になりました。著者のフォロワーは7万人もいるとのこと。すごいですね。
 3.11のとき、著者は福島第一原発にいて、その後の収束作業にも自ら「志願」して参加しているとのことです。もっとも、親には言っていないそうです。著者名が仮名になっているのも、そのせいでしょうか・・・。
 それにしても、現場からの貴重な情報発信だと思います。今も続いているようです。
この本で明らかになったことは、
 第一に、福島第一原発事故は今も「収束」なんかしていないこと、政府の宣言は国民をだますものであること。
 第二に、原発事故の収束作業は今から何年どころか。何十年でもなく、何百年もかかるものであること。
 第三に、それにしては国が東電という私企業にまかせているのはおかしいこと。東電は予算を削ろうとしているが、国が全面的に責任をもってやるべきこと。
 第四に、そのためにも現場の作業員をきちんと確保しておく必要があるけれども、劣悪な環境で働かされる割にはペイがよくないし、海外へ原発を輸出したら、日本では技術者が足りなくなること。
 第五に、これがもっとも肝心なことだが、要するに原子力発電所というのはあまりに危険すぎて、とうてい人類の扱えるようなものではないこと。
 これらのことが、現場で働く実感をもって語られています。同感、共感させざるをえません。
 福島第一原発事故の収束作業に従事している人たちは、ごくごく普通の人が一生けん命にがんばって働いている。ただ、この現場は今でも特別な場所だし、事故は収束なんかしていない。
 現場で3時間も働くためには、移動時間をふくめて前後8時間以上がかかる。逆に言うと、拘束8時間であっても、そのうち3時間しか現場では働いていない。
現場付近でマスク外して、タバコを吸ったり、食事したりする作業員がいる。建設作業員には、放射線について知識のない人も多い。人手が足りないので、そんな人たちも集められている。
 使用済み燃料の取り出しが3年後から始まって、3年くらいかかるだろう。原子炉の燃料とり出しは10年後に始まるだろう。つまり、早くて20年後にすべての燃料の取り出しが終わるということ。
 原子炉建屋内は線量が高いので、作業員が被曝しながら「人海戦術」でやるしかない。
東京電力は解散して、送発電を分離して、国が先頭に立って予算も作業員の給料も面倒みなければダメ。今は、一流企業(私企業)のやり方で「収束」作業をしている。
 2011年12月の「収束宣言」のおかげで、現場での労賃が大幅に下がった。「収束」したのだから「危険手当」が少なくなってしまったのである。
 いまだに、毎時0.6億ベクレル以上の放射性物質が日本中に向けて拡散している。
 テロ対策の訓練をしているけれど、ガードマンが1時間もテロリストと対応しているという非現実的なマニュアルに頼っているのが現実。
 そうなんです。北朝鮮の「テポドン」の脅威を安倍・自公政権は強調しますが、原発へのテロ攻撃は現状では防ぎようがないものですよね。そのことについて、政府は知らんぷりです。本当に怖いことは国民に知らせません。それは、「国民がパニックになってしまうから」だというのです。それって、まるで国民をバカにした発想だと思いませんか・・・。
 著者の健康が心配になりますが、ぜひ引き続き内部の情報を発信してください。心より期待しています。
(2013年10月刊。1600円+税)

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