弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2014年2月 7日

ネットと愛国

社会


著者  安田 浩一 、 出版  講談社

 日本を愛しているのは自称右翼の専売特許ではありません。むしろ、素直に愛せる日本を子や子孫に守り伝えたいと思っているのが左翼ではないでしょうか・・・。
 ザイトク会という特異な団体がマスコミを騒がしています。「在日特権を許さない市民の会」というのですが、「在日」の人に「特権」があるなんて、まともな人の主張とは思えませんが、本人たちはいたって本気のようですから、怖いです。
 そして、その「ザイトク会」は会員が1万1000人というのです。それだけ、世の中の真実をまともに見れない人がいるということですから、悲しくなります。しかも「ザイトク会」の幹部のなかに祖父が在日韓国人だったという人物もいるというのです。そう言えば、ユダヤ人を大虐殺したナチス・ドイツのトップにもユダヤ人の血が混じっている人が何人もいたようです。
 在特会のリーダーの桜井誠の本名は高田誠。北九州八幡西区の出身。高校生までは影の薄い男だった。
 在特会は2007年1月にスタートした。幹部のほとんどが本名ではなく、ペンネームをつかっている。本部事務所の住所も公表していない。在日の人の通名を「特権」と批判しながら、自らは通名を名乗るというのは、どういう神経でしょうか・・・。
 新右翼団体「一水会」は、在特会を「まるで弱い者いじめで、とうてい賛同できない」ときびしく批判する。
 在特会のメンバーは既存の右翼を嫌う者が多い。右翼と混同されないよう、「特攻服」を着ない。
 在特会はソフトバンクを攻撃する。オーナーが元韓国籍だから。
 私は、これだけで、なんと心の狭い人々なんだろうかと哀れに思いました。これでは世界平和も何もあったものではありません。
この本は、「在日特権」なるものが、全くのデマだということを事実をあげて証明しています。私もまったくそのとおりだと思います。
 在日の人に生活保護が多いというのも「特権」ではなく、そういう現実があるという悲しい状況を反映しているだけなのです。それを「特権」だなんて、話がアベコベです。
 そして、ヘイトスピーチは単なる言論の域をこえて(逸脱していて)、もはや犯罪(コトバによる暴力)です。京都地方裁判所などが犯罪としたのは正当な判断です。
 「ザイトク会」の実態を明らかにした労作です。それにしても、こんなにも心の狭い人が増えている日本は心配です。マスコミは、きちんと犯罪(現行犯)とみて扱うべきです。間違ってもヘイトスピーチを言論の自由のレベルで論じるべきではありません。その点では、判例にしたがう必要があります。
(2013年6月刊。1700円+税)

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