弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年12月22日

霧社事件

日本史(現代史)

著者  邱 若龍 、 出版  現代書館

1930年(昭和5年)10月、日本統治下の台湾の山岳地帯で起きた先住民(タイヤル族)の放棄とその顛末が台湾人によって劇画となっている本です。
 この霧社事件については、既にいくつかの本を紹介していますし、最近は映画も見ていますので、私にはイメージがよくつかめますが、映画を見ていない人には、ぜひこの劇画を読んで山岳地帯とタイヤル族の生活、そして蜂起にいたる日本の圧政をイメージをつかんで実感してほしいと思います。
 タイヤル族は、台湾の先住民のなかではもっとも広範囲に分布し、強い民族性をもっていた。顔の入墨(いれずみ)と首狩りは民族の戦闘性の象徴となっていた。主として焼き畑と狩猟で生計を立てていた。ところが日本統治下では、山地は官有林として没収され、首狩りはもちろん厳禁、銃も奪われた。
 反抗事件が次々に起きたが、ことごとく圧倒的火力を有する日本軍によって制圧された。
 タイヤル族において入墨は個人の成長や能力を社会が認知したしるしとして重要な意味をもっていた。それがあることによって結婚も許されるのである。
 入墨がない者は、永遠に子ども扱いされる。入墨をするには、女子であればきれいな布を織れることが必要。男子であれば少なくとも敵の首を一つ持って帰ることが条件である。
いやはや、これはすごい民族ですね。でも、人を殺して一人前というのは、アメリカでも同じようですよ。少なくとも、ベトナム戦争のころ、徴兵制のあったアメリカでは一人前の男は人が殺せることという不文律があったということです。たしかに、アメリカ人はいつまでも国の内外でよく人を殺していますよね・・・。
日本人が大勢集まる運動会に狙いを定めて、一斉に襲いかかり、日本人だけを老若男女、ほとんど全員殺してしまったというのが霧社事件です。そのなかには、日頃お世話になっていたはずの日本人医師までいたといいますし、日本人の子どもまで助かっていないのですから、それほど日本への憎しみは激しかったのです。
 300人のタイヤル族の青年たちが4000人もの日本軍を相手に1ヶ月以上も戦ったのでした。日本統治下の台湾で起きた事件として忘れてはならないものだと思います。
 ネットで見つけて、アマゾンで購入しました。
(1993年4月刊。1700円+税)

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