弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年11月20日

内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ

社会

著者  保阪 正康・東郷 和彦ほか 、 出版  角川ワンテーマ21新書

とても共感できる、大切な指摘がたくさん書かれている本です。とりわけ若い人に読んでほしいと思いました。
 国民が戦争を待望する心理を持つ状態になると、戦争好きな、そして自らの政策の失敗を隠そうとする政治指導者は、これ幸いに国民のそんな感情を厚かましく利用する。
 政治指導者が「戦争」という手段を選択したとき、それは、政治家として、国民の生命と安全を守るという基本原則を踏み外したわけで、失敗したということである。
 戦争は、ある日突然に起こるのではなく、社会的空気や雰囲気が次第に「平時」の持つバランスを欠く事態になり、軍事指導者は、それらを巧みに利用しながら、戦争へ導いていく。
 戦争とは、要は「敵国将兵」や「敵国民」の大量殺害を目的とする。しかし、敵国の人々を殺傷するということは、「敵国」から私たちも殺傷されるということ。お互いに殺傷をくり返し、その被害が大きい側、あるいは被害を通り越して壊滅状態に追い込まれた側が「敗戦」したことになる。
 戦争に進む道を歩んでいるときは、威勢のいい意見や声高に愛国心を説く者が、あたかもヒーローであるかのように見える。
 軍事的衝突を前提としない国づくり進めてきた国には、それに伴う国際社会での信頼と安心を与えてきたという事実がある。
 中国が気にくわないからといって、いたずらに互いの国民感情を挑発しあう言動をくり返すのは、戦争への意見の皮膚感覚を失った「右からの平和ボケ」以外のなにものでもない。
 いま、「愛国心」を叫ぶ人には愛はない。他人を非難し、攻撃するためだけに「愛国心」が使われている。
 日の丸・君が代を学校現場で強制するのでは、日の丸・君が代が汚れてしまう。
日本のマス・メディアは権力の愛玩犬(プードル)になりさがっている。本来の機能である監視犬の割合を果たしていない。
 前にも紹介しましたが、デンマークの映画『アルマジロ』がとりあげられています。アフガニスタンに派遣されたデンマーク軍の実情を従軍して取材した映画です。この映画をみたデンマーク国民の多くが、たちまちアフガニスタンへの軍の派遣に反対するようになったのでした。何しろ、「文明国デンマーク」の若者が、粗暴で残虐で野蛮な兵士になってアフガニスタンで人を殺している現実があるのです。そして、市民生活を悪い方向に追いやっているのです。これでは、反戦になるのも当然です。
 とても時宜にかなった本です。200頁たらずの本ですので、ぜひご一読ください。
(2013年6月刊。781円+税)

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