弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年9月 7日

幕末江戸下町絵日記

日本史(江戸)

著者  福原 敏男 、 出版  渡辺出版

江戸は幕末。そして、下町に生活する町絵師による絵日記です。
 幕末の京都のような殺伐とした雰囲気はまったく感じられません。のどかな下級武士の日常生活を絵日記で知ることができます。
 主人公は福田永斎という絵師。その師は佐竹永海。さらに永海の師は高名な谷文晁。
 慶応元年のころ永斎は30歳前後。明治26年ころには満60歳だった。
 明治19年まで、永斎は駒場農学校の仕事をしていた。そこで、博覧会の向けの出品害虫図を描いて博物標本画で生計を立てていた。東大の総合研究博物館が所蔵している東京大学害虫学研究室にある『昆虫飼養日誌』は永斎の作品と思われる。
 永斎は、幕末に秋葉原に住み(独身)、神田・浅草・大野・下谷・深川を行動範囲とした。絵によって日常生活が記録されている。
 ほのぼのとしたタッチで、当時の下級武士ないし町民の日常生活が描かれています。
 食事の風景、二日酔いで寝ている姿など・・・。同輩とともに、火鉢で燗をつけて楽しく飲みかわしている光景もあります。
 神田明神での相撲を見物しにも行っています。
 藤沢周平など、江戸時代に舞台とする小説を読むうえでもイメージのわいてくる貴重な絵日記です。
(2013年3月刊。2400円+税)

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