弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年7月28日

ワニの黄色い目

世界(フランス)

著者  カトリーヌ・パンコール 、 出版  早川書房

いかにもフランスの小説だな、そう思いつつ上下2巻の本を読みすすめていきました。大人の男女の絡み合いが複雑なうえに、若い男女もからんできてストーリーはややこしく展開していきます。
 しかも、そのときどきで語り手が代わり、その視点で物語がすすんでいきますので、ますます、ややこしくなります。
 一般に、小説は読み手が本の登場人物に感情移入することが大切だといわれていて、モノ書き志向の私もそれを心がけているのですが、この本は、そんなルールなどお構いなしに、目まぐるしく視点が変転しながら、どんどん話が展開していき、ついていくのが大変です。上下2巻からなるこの本はフランス人の女性作家の手になるもので、フランスの女性に大受けして、3部作シリーズはなんと400万部を突破したというのです。これはすごいことですよね。
 監訳者のあとがきを紹介します。まさしく、そのとおりの本なのです。
恋愛あり、不倫あり、夫の家出や、ねじれた母親との関係あり、娘との葛藤あり、はては殺人事件までありと、登場人物のさまざまな女性が経験する人生のドラマを、ときには深刻に、ときにはユーモアをまじえながら、軽妙に描いた三部作の一作目。
 ロイヤルファミリーの大変さが語られるかと思うと、小説を書くことの大変さまで、そしてゴーストライターやら、本の販促など、さまざまなテーマが怒濤のように進行していくので、しまいには何がなにやら理解するのも困難になるうちに大団円を迎えてしまうのでした。
 私には、とてもこんなマネは出来ないなと思いつつ、著者に敬意を表して紹介してみました。
(2011年10月刊。1600円+税)

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