弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年7月18日

いま「憲法改正」をどう考えるか

司法

著者  樋口 陽一 、 出版  岩波書店

安倍内閣が参議院議員選挙のあと、憲法改正に走り出すのは必至の情勢です。投票率が5割前後と予測されているなかでの自民党「大勝」ですが、選挙で信を得たとうそぶいて強権発動する恐れがあります。根っからの狂信的な改憲論者が首相だというのは、本当に怖いですね。
ところで、憲法って、そんな権力亡者を取り締まるためにあるものなんですよね。それを立憲主義と言います。そして、この立憲主義は戦前の帝国憲法の下でも、指導層の共通認識だったというのです。これは初耳でした。
 戦前の日本で、立憲主義は指導層の間で共有されていたキー(鍵)概念だった。伊藤博文は帝国憲法制定の最終段階に、憲法を創設する精神として、第一に君権を制限し、第二に臣民の権利を保護するにあるとした。
 帝国憲法の適用にあたって、立憲主義は憲政のキーワードであり続けた。二大政党の正式名称は、立憲政友会、立憲民政党だった。
 帝国議会の意思を無視した超然内閣だとして寺内正毅内閣を攻撃する側は「非立憲」をもじって「ビリケン」寺内と呼んだ。それほど、「立憲」という言葉は世の中にゆき渡っていた。
 そうなんですか、ちっとも知りませんでした・・・。
 日本国憲法を受け身で受け入れた戦後の日本社会では、憲法が権力の行使にとって多かれ少なかれ邪魔になるという緊張関係をつくり出し、維持することによって、いわばその基本法を確認し直してきた。
 日本の自衛隊は、国際法上はすでに軍として処遇されている。ただし、直接に戦闘行為をすることのない軍として、国際社会で受け入れられていることも確かなのである。
 戦前の大日本帝国は「満州事変」、「支那事変」、「大東亜戦争」を、15年にわたって遂行してきたが、それはすべて「自衛」の名におけるものであった。
 「決める政治」をひたすら求めていけば、憲法という存在そのものが邪魔になるのは道理である。
 憲法を改正するというのは、遠い話とか、毎日の生活とは無縁のことではない、このことがよく伝わってくる本でした。
(2013年6月刊。1500円+税)
 参院選の最終盤になって、自民党の「大勝」が予想されるなか、安倍首相が改めて憲法改正、9条改正を言い出しました。私は、これはひどい、政権党として姑息なやり方だと思います。憲法9条を変えて自衛隊を「国防軍」にしようというわけですが、それは単なる名称の変更ではありません。海外に戦争しに出かける軍隊をかかえたとき、日本社会がどう変わるのか、その点を安倍首相は自分の口から語るべきです。それも、選挙のはじめから・・・。土壇場になって「大勝」が決まってから言い出し、選挙後に、憲法改正を揚げて大勝したから国民の信を得たというのでは、国民を欺したことになると思います。
 いま、弁護士会は10月に、自民党の「国防軍」構想に反対するという決議をしようと論議し、準備しているところです。
 それはともかく、参院選の投票率が5割ほどと見込まれていますが、困ったことです。みんなが投票所に足を運ばないと、世の中は悪くなる一方です。あなたまかせではいけませんよね。

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