弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年5月17日

日経新聞の真実

社会

著者  田村 秀男 、 出版  光文社新書

日経新聞を毎日よんでいます。株をもっているわけではなく、投資に関心もありませんが、経済界の動き、とりわけ財界の動向を知りたいからです。
 この本のサブタイトルは、なぜ御用メディアと言われるのか、です。そうなんです。御用メディアだと思うからこそ、毎日くまなく日経の紙面に目を通しています。
元日経の自称エース記者が書いていますし、そこに書かれていることは、みな、なるほど、そのとおりだとうなずくことばかりです。
 新聞記事は3度読ませるもの。まずは見出しで読ませ、次は前文で読ませる。そして、最後に本文で読ませる。
 日経の経済記事の論調は、現在まで日本の経済メディア全体をリードしてきた。しかし、今や「官報」とまで言われるその惨状は、OBとして目を覆いたくなるほどだ。世論をミスリードし、言いようのない閉塞感をもたらしている。
 1985年9月のプラザ合意とは、アメリカ自身の政治的な動機にもとづく、日本産業の封じこめ策だった。しかし、対米関係を最優先する日本政府に警戒心はなく、率先してこれに協力した。そういうことだったんですね・・・。
新聞記者は立場によって権限も働き方も異なるが、しょせんはサラリーマンである。新聞記者といえども組織に身をおくサラリーマンであるから、社内で、より高い地位に上りたいと思うのは自然なこと。管理職になるには、記者としての能力とともに、リーダーシップと、ある種の政治力が求められる。
 新聞社も会社組織です。部やチーム内の調和を乱す者に対しては、「あいつは使いにくい」とか、「言うことを聞いてくれない」などの評判が立ち、管理職には不向きという烙印が押されてしまう。
 財務省の高級官僚は、新聞本社への洗脳攻勢をぬかりなくかけている。その結果、財務次官と肝胆相照らす仲の幹部が新聞社の社長に上りつめるケースも多い。
 伊藤元重・伊藤隆敏という東大教授はよくマスコミに出てきます。元重教授について、まさに世渡り上手な御用学者そのものと評されています。きっと、そうなのでしょう・・・。
 「大政翼賛会」の主翼を受けもった全国紙の役割は、まさしく少数意見を圧殺し、軍部が正しいとする世論を形成することだった。それを彷彿させるのが、現在のマスコミの状況である。
 メディアの大半は消費増税の大合唱を繰り返している。デフレ下の増税がいかに日本を衰退させるか考えたこともないメディアの繰り出す財務省追従型の「増税不可避説」は、国民や国家の利益を損なう意味で、政治よりもはるかに悪質だ。共産党も同じことを主張していますよね。消費税を値上げしたら景気は今より悪くなって,国家の税収も落ちる。それよりむしろ労働者の賃金を上げて、国民の購買力を向上させるほうがいい。そのためには大企業のためこむ内部留保をちょっぴりでもはき出させようと・・・。心ある人の主張って一致するものなんですね。
 それにしても,今のマスコミの首脳部はひどいと思います。安倍首相に連日連夜のように,高級料亭で接待を受けているのです。これに,例の内閣官房秘密費が使われているのでしょう。なにしろ、月1億円を自由に使っていいというのですから・・・。
(2013年4月刊。740円+税)

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