弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年4月26日

日米地位協定・入門

社会

著者  前泊 博盛 、 出版  創元社

読めば読むほど、腹の立ってくる本です。いえ、この本の著者に対してではありません。この本に書かれている内容が問題なのです。
 いったい、はたして沖縄は日本なのか。なぜ、戦後70年たっても、アメリカ軍はまだ日本にいるのか。いやいや、日本は、これで本当に独立国家なのか・・・。
 胸に手をあてて、自問自答するとき、いずれのこたえも「ノー」でしょう。残念ながら、「ノー」と答えざるをえません。でも、本当にそれでよいのかと問い返されたら、もちろんそれでいいはずはありません。バカにするんじゃない。そう言ってやりたいじゃないですか。
 アメリカが日本を守ってくれるかなどという疑念をもつこと自体、アメリカに対して失礼である。これは、外務省の内部文書に書かれているものです。驚くではありませんか。これでは、日本は文字どおりアメリカの属国ですよね。
 オスプレイは日本の上空で平均150メートルで飛ぶことが認められている。と言うことは、日本の法令で定めた150メートル以下でもオスプレイは飛べるということですよね。だって、「平均」ということは、それ以下の高度でも飛べるということですからね。これって、恐ろしいことですよね。
 そして、野田首相は「アメリカ軍にどうしろ、こうしろとは言わない」と国会で公式答弁してしまいました。情けない日本国首相です。そして、今の安倍さんは、もっとひどいです・・・。
日米地位協定とは何か?
アメリカ占領期と同じように、日本に軍隊を配備し続けるためのとり決め。日本におけるアメリカ軍の強大な権益についてのとり決め。
 1952年、日本は独立した。しかし、それは、看板だけとりかえて、実質的には軍事占領状態が継続した。
 アメリカ軍関係者は一切の入国手続を省略して自由に日本に出入りすることができる。日本にあるアメリカ軍基地に出入りするときに自由なだけでなく、基地からの出入りについても、完全にノーチェック。だから、日本政府は、日本国内にアメリカ人が何人いるか把握することができない。日本のなかにアメリカ人がいて、あるべき国境がないというのですから、日本ってまるで植民地ですよね。
 日本にいるアメリカの将兵が3千人しか移住しないのに、日本政府はアメリカに対して8千人分の移住費用を支払う。もちろん、これは税金。
広大な横田基地は首都・東京にある。そして、首都圏の上空には「横田ラプコン」といわれる巨大なアメリカ軍の管理区域がある。だから、日本の民間航空機は無理な急旋回と急上昇を余儀なくされる。
アメリカ軍将兵が犯罪をおこしたとき、公務執行妨害、横領・詐欺などについては起訴率ゼロ、まったく罪に問われていない。もっと重大犯罪であっても、常にあまりに寛大すぎる判決が出るのみ。
アメリカ軍の飛行機が日本国内で事故を起こしたとき、基本的にアメリカ軍の指揮下にあって、日本国民もアメリカ軍の命令に従われなければならない。とんでもないことですよ。こんなこと、絶対に許せません。ところが、現実には日本の司法は、政府と同じようにアメリカ軍の前にひれ伏すばかり。
 日米安保条約を解消するのは簡単なこと。終了の意思を日本政府がアメリカ政府に通告したら、1年たつと自動的に終了する。
そんなバカなことと思う人には、フィリピンとイラクの実例が紹介されています。いずれも、アメリカ軍が渋々ながら撤退していきました。フィリピンでは、アメリカ軍基地跡は経済的に大繁栄しているとのことです。同じことは沖縄でもあります。おもろ町周辺の近代な町並みは、基地跡地ですよね。
 前に末浪靖司氏の本『対米従属の正体』(高文研)を紹介しました。その後も、続報が続いていますが、有名な伊達判決をひっくり返すため、最高裁の田中耕太郎長官が駐日アメリカ大使に裁判の内情を全部バラして、指導を受けていたのでした。先日の新聞によると田中長官は当然のことをしているだけ、アメリカ大使と話すことが裁判官としての守秘義務に反するとは思っていなかったとのこと。信じられない感覚です。
そして、この本によると、同じように最高検察庁もアメリカの指導するとおりに論告していたというのです。守秘義務をふみにじり、日本の主権を裏切った司法界のリーダーたちは許せません。今からでも遅くありません。必ず資格剥奪処分をすべきだと思います。こんな人たちが愛国心をもてと若者に説いていたなんて、まるでマンガです。腹が立って仕方がありません。高血圧の人にはおすすめしませんが、日本人の必読文献だと思います
(2013年4月刊。1500円+税)

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