弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年3月19日

チャイナ・ジャッジ

中国

著者  遠藤 誉 、 出版  朝日新聞出版

薄熙来の失脚事件、そして妻・谷開来の殺人事件を追跡した本です。
 中国共産党中枢の奥深い腐敗の闇が暴かれています。薄熙来は1947年7月生まれ。私と同じ団塊世代だというわけです。父親は、薄一波元副首相です。
 文化大革命のときには父親を殴る蹴るの狼藉を働き、倒れた父親を足蹴りして、薄一波の肋骨を3本も折ってしまった。
 母親は、1967年1月紅衛兵に迫害され、広州に行く汽車の中で自死した。48歳の若さだった。
 薄熙来は、薄一波が秘書との不倫関係で生ませた子どもだった。
文革時代に監獄で4年間を過ごした薄熙来は、牢の中でどのようにしていれば大将になれるか、また監獄の看守とどのような関係を結べば飯にありつけるか、極道の原理を学んできた。また、共産党高級幹部の子弟として、政治権力抗争を目の前で見てきた。今に浮かび上がるチャンスをうかがいながら、自分を嫌う役人たちの中で策を練っていた。
 薄熙来の出世のスピードは、実は非常に遅い。大連市党委の副書記となるまでに8年かかっている。1993年に、ようやく大連市長になった。
 1997年9月の第15回党大会における中共中央委員選挙において、薄熙来は、ただの一票も獲得できずに落選した。
 妻の谷開来は、1988年に弁護士資格を取得し、その後、開来律師事務所を北京で運営し、支店を大連に作って投資コンサルタントとしても活躍しはじめた。
 日本留学者の多くが中国に帰国しているとの対照的に、欧米留学者の多くは帰国せずに留学先国で永住権を取得している。中国国籍は放棄せずに、いざというときの担保にしておき、永住権だけは確保しておく。日本は「裸官」の対象ではない。
 薄熙来が重慶市の書記になって、80日間に検挙した刑事事件は3万3千件近く。治安事件として取り調べた件数は5万3千件近くで、9500人を逮捕したため、刑務所は定員をオーバーした。
 薄熙来のようなやり方をすれば、中国共産党体制は一瞬で崩壊するだろう。それだけは絶対に防がなければならない。これは中国共産党トップの全員が共通する認識として決議された。これが中国の審判の基準すなわちチャイナ・ジャッジだ。ここでは腐敗問題は理由にあげられていない。薄熙来の場合、中国共産主義体制を守るためという、ほぼ全員が一致したジャッジを行った。
 2009年の全世界の留学生の総数は343万人。そのうち44万人が中国人留学生であり、最大の留学生だ。最大の留学生受け入れ国はアメリカで、外国人留学生総数は70万人。
 アメリカにいる中国人留学生の数は16万人。次に多いのがインド人、韓国人となっている。中国人留学生は前年度比23%増となっている。ところが、日本だけは前年より留学生の総数が減っている。
 薄熙来の息子・瓜瓜はロンドンの高級マンションに住んでいた。オックスフォード大学に在学していたときのこと。少なくとも3億円はするマンションを購入したとき、薄熙来は遼寧省長だったが、月収は数万円にすぎない。
 党の幹部を親にもつ太子党はコネを使って中国大陸で稼ぎ、親戚らのコネをつかって目立たないように資産を香港に移していく。
中国共産党の最高指導部の常務委員9人のうち、少なくとも5人の子どもか孫がアメリカに留学している。習近平の娘もハーバード大学に在籍中だ。
 怪しげな殺人事件の真相はいったい明らかになるのでしょうか・・・。
(2012年9月刊。1700円+税)
 桜の花が一気に7分咲きとなり、チューリップが咲きはじめました。いま、わが家の庭には、黄水仙、紅いアネモネ、パンジーが花盛りです。
 これから500本のチューリップが一斉に咲いてくれます。いよいよ春本番の到来です。

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