弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年2月28日

原発難民

社会

著者  鳥賀陽 弘道 、 出版  PHP新書

この本を読んで驚き、かつ、呆れたことは次のくだりです。なーんだ、政府(菅首相以下)も東電も法律に反していたことは明らかじゃないか。改めて怒りを覚えました。
原子力災害対策特別措置法15条に定められたとおり、福島第一原発が政府に「緊急事態」の通報を3月11日午後4時45分にした時点で、放射能格納容器が壊れることを想定し、住民非難を指示しなければいけなかった。すなわち、放射性物質が外に漏れ出すことを考えて、住民を避難させなければならなかった。
 安定ヨウ素剤を子どもにのませるのは、被曝から24時間以内でないと効果が急激に下がる。格納容器が壊れてから飲んでも意味がない。「壊れそうだ」という時点で飲ませなければいけない。
 メルトダウンがあったのか、なかったのかという論争は、住民避難の観点からは、枝葉末節でしかない。寺板信昭・原子力安全・保安院長は、15条通通報が出たのだから、ただちに緊急事態を宣言し、住民避難を開始してくださいと菅首相に進言すべきだった。15条通報の段階では、原子力のなかでどうなっているのか、メルトダウンしているかどうかは分からない。分からなくても、15条通報があったら、住民の避難を開始すべきだった。
 このとき、東電は事態をまだ楽観視していて、廃炉になるとは思っていない。菅首相などの政府首脳も、それは同じこと。だから、ずっとずっと後手後手にまわってしまい、犠牲者を増やしてしまった。
東電、原子力安全・保安委員そして政府(菅首相)は、なんとかして廃炉になるのを避けたいと思っていた。原子炉を助けようとして、住民のことを忘れていた。
 巨大な資産だった原発が、一気に価値ゼロの廃棄物になるため、バランスシートが急激に悪化する。
 1号機を廃炉にする決断を早くしていれば2,3号機は助かったかもしれない。
1号機の水素爆発によって、放射能レベルが高くなったため、2,3号機に近づけなくなり、3月14日と15日に、メルトダウンを起こした。
全電源喪失や炉心溶融は、地震や津波と関係なく起きる現象である。格納容器は壊れないことにしてしまう。
日本の原発は、テロ、ミサイル攻撃そして誤操作などに対して十分に対策がとられているとは思えませんよね。恐ろしいことです。
(2012年11月刊。760円+税)

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