弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年2月 6日

ロッキード・マーティン、巨大軍需企業の内幕

アメリカ

著者  ウィリアム・D・ハートゥング 、 出版  草思社

アメリカのF・35を日本の航空自衛隊は2011年12月に採用を決めた。しかし、技術的な問題を抱えており、実用化が遅れている。これに対してF・22ラプターは世界最強と言われるアメリカ空軍のステルス戦闘機。日本の航空自衛隊も欲しがったが、最新技術の流出を怖れるアメリカ政府が輸出やライセンス生産を禁止したため実現しなかった。
 このラプターは当初計画では750機を250億ドルで調査するはずだった。それが、その後、その半分以下の339機を倍以上の620億ドル(7兆円)ということになった。なぜ数を半分に減らしたのに、コストのほうは2倍半に膨らんだのか。
 それはバイ・インという手法による。先に契約をとっておいて、あとで値段をつり上げる手法だ。ロッキード・マーティン社は実際にははるかに多くかかることを知りながら、見積を低く入札したのだ。ここに、必ず予算オーバーになるからくりがある。
 2001年から2003年にかけてのアメリカ国防予算の増加分だけで、イギリス・中国をふくむ世界の主要国の国防予算の総額を上回っていた。
 アメリカの次期大統領専用ヘリコプター開発計画は、1機5億ドルもかかる。
 このヘリコプターは、アメリカ核攻撃を受けても、飛行しながら大統領は機内で調理された夕食をとることができる・・・。なんということでしょうか。
 ロッキード・マーティン社は、アメリカ最大の軍需企業である。連邦政府から受注した360億ドルのうち、290億ドルが国防総省との契約だ。ロッキード・マーティン社は、このほかキューバのグァンタナモ米軍基地にあるテロ容疑者収容施設へ取調べ官の派遣、アフリカのダルフールにおける人権侵害を監視するスタッフの派遣、ハイチでの警察官の訓練、コンゴ民主共和国で郵便事業の運営、アフガニスタンの憲法草案作成の手助けなど、さまざまな業務を行っている。
ロッキード・マーティン社は、議会へのロビー活動と議員の選挙運動資金の寄付として、2009年だけで、1500万ドルを使った。従業員は14万人。
ロッキードは朝鮮戦争で大いにもうかった。1952年までに国防総省が調達した航空機は第二次大戦後に減少した時期の3倍以上の9300機だった。
 1947年に19万2000人だった航空機産業の従業員数は、その3倍の60万人に膨れあがった。
 まことに、戦争というのは軍需企業を肥え太らせるものなんですね。これが戦争が世の中からなくならない大きな理由です。戦争で死んで亡くなる人、それを嘆き悲しむ大勢の人々がいる一方で、もうかつての笑いの止まらない一握りの金持ちがいるわけです。
 C-5Aという巨大な輸送機を見たことがあります。この本によると、このC-5Aは巨大な金食い虫であったばかりか、粗悪品、欠陥機とも呼ばれる代物だったというのです。知りませんでした。
 オスプレイは既に日本に配備されましたが、何回も死亡事故を起こし、欠陥機と指摘されている飛行機です。
ブッシュ(父)政権の国防長官だったディッグチェイニーはオスプレイ開発計画をつぶそうとした。それをクリントン大統領が予算を増額して推進した。
 クリントン政権初年度に年間30億ドルだったミサイル防衛関連予算は、2期目の最後の年の2000年には50億ドルにまで増えた。その結果、ロッキード・マーティンが受けとったのは、ミサイル防衛関連だけでも10億ドルをこえた。
 チェイニーの妻がロッキード・マーティン社から受けとっていた役員報酬は年俸50万ドル(5000万円)。
退役将軍の多くは防衛産業とつながっている。退役した将軍たちは頻繁にテレビに出場して、ブッシュ政権のイラク戦争の正しさを視聴者に売り込んだ。
 そうなんです。要するに軍というのは利権の巣なのです。だから、昔から軍人は戦争を好みます。嫌ですよね・・・。
 10年に1度戦争を起こし、在庫一掃の大チャンスだ。これが軍人のホンネなのです。
(2012年9月刊。2600円+税)

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