弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2013年2月 1日
秀吉の朝鮮侵略と民衆
日本史(戦国)
著者 北島万次 、 出版 岩波新書
秀吉の朝鮮侵略は、1592年(天正20年)から、1598年(慶長3年)まで、前後7年にわたった。秀吉政権は、家臣や諸大名の目を海外征服にまで向けさせる果てしなき戦争体制によってのみ維持・強化しえた。
その海外制覇の野望は1587年(天正15年)の九州平定直後に具体化される。
加藤清正が豆満江を渡ってオランカイ地域に進入した目的は、オランカイから明へ入るルートを探ることにあった。しかし、オランカイは広く、のち清朝を興す女真部族が割拠し、耕地は雑穀遅滞であって、兵糧が取られる見込みはないとみて、清正は断念した。
1593年、平壌の戦いと幸州の戦いにおける日本軍の敗北、碧蹄館の戦いにおける明軍の敗北、これによって日本と明の双方から和議の気運がもちあがった。
1593年5月、石田三成・小西行長らに付き添われて名護屋に着岸した謝用梓と除一貫は明の皇帝から任命されてもいない偽使節だった。彼らは、諜報機関の一員(スパイ)だった。
そして、小西行長は朝鮮にもどって、明軍の沈惟敬とはかって行長の家臣である内藤如安を秀吉の降伏使節に仕立て、明皇帝のもとに派遣することにした。1594年12月、内藤如安は北京に到り、明皇帝の朝見を受けた。そして、明皇帝は秀吉を日本国王に冊封するとした。
1596年、小西行長は秀吉に対して、加藤清正が和議を妨害したと讒訴した。
1596年9月、秀吉は大坂城で明皇帝の使者と対面した。そのとき、明使は秀吉に拝跪を求めたが、秀吉は膝間に瘡ありと称して拝跪しなかった。そのうえで、明使は日本軍の朝鮮完全撤退を求めたので、秀吉は激怒し、これで日明講和交渉は破綻した。
第一次朝鮮侵略は明征服を目指したが、その野望は挫折した。しかし、動員した諸大名には恩賞を与えねばならない。そこで、秀吉は朝鮮南四道奪取を目指した。
1597年12月の蔚山倭城を明軍が攻撃するにあたって、呂余文という名前の降倭を偵察としてつかった。呂余文は剃髪し、日本兵に変装し、蔚山に潜入した。
さらに、清正の家臣であった降倭の岡本越後守(沙也可)と宇喜多秀家の家臣であった降倭の田原七左衛門が明軍の勧告状を手にして加藤清正と面談した。
日本の将兵が明と朝鮮軍の捕虜となったばかりか、積極的に抗日の戦いに加わっていたとは、いささか驚きでした。
降倭とは、秀吉の朝鮮侵略のとき、日本の陣営から朝鮮あるいは明側に投降した将卒や雑役夫などの日本人をいう。1593年には、降倭を疑いの目で見ることが多かった。1594年から降倭のうち悪賢く制しがたいもの以外は殺さず、降倭それぞれが習得している軍事技術を伝習させる方向に重点が置かれるようになった。そして、給料を与えて射撃や刀槍の術などを伝習させた。また、剣銃の鋳造などにもあたらせた。さらに、降倭を間諜として利用することもあった。
要叱其(よしち)という降倭は軍官(将校)となり、日本軍に復帰する意思は毛頭なかった。降倭は、日本軍との戦闘のみならず、女真族との対決にも動員された。
降倭になった者の動機には、日本軍の大将の性格が悪く、課せられた役儀が重く厳しいからというものがある。兵卒に課せられた際限なき築城と普譜、その反対に大将は茶の湯や連歌・けまり。これが兵卒を降倭に走らせる引き金となった。
特定の従順な降倭をとり立て、その降倭に降倭全体を束ねさせた。しかし、降倭内の対立があり、結束したわけではなかった。それでも、配下を率いて投降し、定住する降倭の部将もいた。沙也可は金忠善となった。さらに、金向義という武将もいる。本拠をつくって定住し、妻子をもち、耕地を保有する降倭もいた。
降倭の実態を詳しく知ることのできる本でもありました。
(2012年10月刊。760円+税)
日曜日に仏検(準一級)の口頭試問を受けました。すごく緊張してのぞみましたが、美容整形手術に賛成か反対かという問いでしたので、何とか答えることができました。実は、もう一つの問いは難しい単語があって意味が分からなかったのです。3分前に問題を渡され選んだ問いについて、3分間のプレゼンをするのです。これがいつも大変です。今回は、たまたまフランス語のできる娘が自宅にいましたので、試験官になってもらって、特訓を受けました。これが良かったように思います。話し慣れていないので、いつも大変なのです。
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