弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2013年1月13日

金属が語る 日本史

日本史(古代史)

著者  斉藤 努 、 出版  古川弘文館

日本の金属貨幣は、7世紀後半の無文銀銭(むもんぎんせん)や富本銭(ふほんせん)に始まる。無文銀銭は、純度95%以上の銀を円盤にしたもので、真ん中に小さな丸い穴が開いている。富本銭は、銅でできているが、ほかにアンチモンという金属も含んでいる。
 皇朝十二銭は銅銭だが、鈍銅ではなく、青銅でできている。その銅山は山口県の長登(ながのぼり)銅山や蔵目喜(ぞうめき)銅山である可能性が高い。
和同開珎(わどうかいちん)の「和銅」は、「日本で初めて」という意味ではなく、「にきあかがね」と読み、製錬しなくても既に金属となっている銅のこと。
 日本刀は、折らず曲がらず、よく切れる。本来は相反する硬さと軟らかさの性質が日本刀という一つの製品の中で共存しているということ。日本刀には、硬い鉄と柔らかい鉄が巧みに組みあわされて作っている。
炭素が多いほど鉄は硬くなる。ここらあたりは、実際に刀匠の働き現場で見せてもらった経験が生きているようです。
刀身製作の最終段階の「焼き入れ」は刀に命を吹き込む瞬間である。これは、刀匠がもっとも神経をつかうドラマティックな工程だ。焼き入れの目的は刃部に焼を入れて硬くすること。焼きの入っている部分を入っていない部分の境界に刃文(はもん)を作ること、刀身に「反(そ)りを入れることの三つ。「反り」は日本刀を特徴づけるものの一つだ。
鉄炮は、炭素濃度0.1%以下の軟鉄で出来ている。日本刀と鉄炮は違う素材で出来ている。鉄炮は、火薬が爆発する衝撃で銃身が割れたりしないように、日本刀のような鋼ではなく、柔らかくて粘り強い軟鉄が使われている。
現代のライフル銃は鉄の丸棒の真ん中にあとから穴を開けて銃身にする。しかし、火縄銃は鉄の板を巻いて筒をつくっていた。
硬貨、日本刀、鉄炮について、改めて、その違いが少し分かりました。
(2012年11月刊。1700円+税)

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